金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

藤井さん、辞めた理由は高血圧でなくBad blood

2010年01月07日 | 政治

昨日(1月6日)藤井財務相が辞任し、後任が菅直人副総理に決まった。藤井財務相が辞任した理由は「健康上の問題」(鳩山首相)。だが日経新聞は「77歳と高齢で血圧も高く、通常国会で予想される激しい論戦に耐えられない、というのは表向きの理由だ」と報じている。

この件についてエコノミスト誌は面白い表現で、藤井氏の辞任背景を説明している。「病気は藤井氏の主な問題ではない。真相は鳩山派閥のトップとのbad bloodにあると思われる」

Bad bloodは「不快な思い、ある個人やグループに対する敵意」を意味する熟語だ。面白いと思ったのは、藤井氏の辞任理由が高血圧High blood pressureではなく、敵意bad bloodというbloodでつながっている点だ。

藤井氏と小沢幹事長の関係悪化に関する説明は、本日の日経新聞に書かれている内容とほぼ一致するので説明は省略して、エコノミスト誌が小沢幹事長の言動について批判している部分を紹介しておこう。

「公共投資に対する民主党への要請はすべて小沢チャンネルを通るようになっている。小沢氏はしばしば政府に利益よりも民主党の利益を優先しているように見える。彼の影響力は日本の政治の透明性を改善することを誓約して、政権を取った民主党とほとんど調和することはない」

その小沢氏についてだが、朝日新聞によると小沢氏側近は4億円の政治献金記載漏れについて同氏は7日にも東京地検の事情聴取に応じると述べたということだ。「陸山会」問題について特別の情報を持っている訳ではないのでコメントを控えて、事情聴取の結果を待ちたい。

ただ小沢氏が100名以上の民主党議員を自宅に招いて新年会を開いたなどと聞くと随分大きな自宅にお住まいなんだなぁ、そのお金はどこから来たのだろうかという素朴な疑問が沸く。

さて財務相に就任する菅副総理について欧米のメディアの反応。エコノミスト誌は「彼の就任で日本の金融市場が不安定になることはないだろう」とやや冷ややかだが、ファイナンシャル・タイムズは「菅氏は基本的にケインジアンで、恐らく(藤井氏より)積極的で拡大的なアプローチをとるだろう」という山口北大教授のコメントや「菅氏は頭の良い人なので国会で討議を上手くまとめるだろう」という歳川氏(インサイドラインの編集者)のコメントを紹介した。

いずれにせよ2008年夏から数えて菅氏は6人目の財務大臣だ。暫く腰を落ち着けて財政の舵取りをして欲しいと思っている。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「中国が世界を支配する時」に挑戦

2010年01月07日 | 国際・政治

ニューヨーク・タイムズの書評欄にWhen China rules the World(仮訳:中国が世界を支配する時)の書評が出ていた。書評を読むと中々面白そうなのでアマゾンで取り寄せることにした。この本の定価は29.95ドル、今日の為替レートで計算すると、2、750円程度なのだが、新本が2千円弱で買うことができた。しかも明日にはデリバリーされるという。昔は洋書は高くて、入手に時間がかかったものだが随分安くて便利になったものだ。

さてこの「中国が世界を支配する時」だが、著者は英国の高級紙ガーディアンのコラムニストのMartin Jacquesだ。書評によると彼の視点が斬新なのは「多くのジャーナリズムやベストセラーが中国の勃興を経済的な現象としてとらえているのに対し、世界を根本的に変える程大きな出来事と認識している」点だ。

著者は「中国は超大国としての米国に取って代わるだけでなく、西欧を歴史の中に置き去りにし現代社会の中核的な概念をひっくり返すだろう」と述べる。

これはどういうことかというと、例えば米国流の政府と企業を厳密に分離するモデルが中国流の官民一体型の経済モデルに置き換わるということだ。また中国が独自の経済路線を見出したことで分かるように、中国は政治面でも西欧のアドヴァイスを求めることはないだろうと著者は示唆している。

中国共産党は中国王朝の現代版であり、王朝の伝統的な役割である中華社会の擁護者である。大部分の中国人はそれが民主的な改革であろうとなかろうと、中国を強くするリーダーであればそれを支持するだろうと著者は主張している。

書評は「将来のことは分からないが、著者の推論は証明可能ではないにしろ、少なくとももっともらしく見える」と評価を下しているので、550ページの大作ながら読んでみることにした次第だ。

☆   ☆   ☆

阿片戦争(1840年)頃から西欧に遅れをとっていた中国は200年の眠りから覚め、成長軌道を驀進しはじめた。やがて中国が輸出するものは安い衣料品や家電製品だけではなく「中国的価値観」にまで及ぶかもしれない。

日本は古来中国から多くのことを学んできた。しかしながら価値観の基盤はかなり異なっている。「良鉄は釘にならず 良人は兵にならず」という諺が示すとおり、中国では文武の「武」を軽視する。しかし日本は鎌倉時代以降「武」を重視してきた。「武」の重視とは単に好戦性を指すものではない。むしろ生産活動(最初は農業)の重視、技術の重視、合理性の重視などの精神だ。この点において日本の価値基盤は中国よりも西欧に近いと私は考えている。

我々日本人も「中国的な価値観とは何か」とか「その中国的価値観を押し付けられた場合日本はどうなるのか」という問題を考えるべきだろう。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする