金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

なし崩し的な中国寄りを警告する

2010年01月26日 | 政治

名護市長選で普天間基地の辺野古移転に反対する稲嶺氏が当選したことは、米国の外交筋にまた一つ懸念材料を増やした。ニューヨーク・タイムズはMartin Fackler氏の「米国は日本で中国のために外交基盤を失いつつある」という記事で、日本が中国シフトすることを警告している。

ただFackler氏が警告している相手は、米国人の読者のみならず日本人の読者も意識していると私には思われた。

米国人に対する警告は「オバマ政権は日本の政権交代によって、伝統的な保護者(米国)とライバル(中国)に対する考え方が変化した度合いを認識するのが遅い」というものだ。一方中国はオバマ政権より巧みに日本の新しい指導者達を取り扱った。中華人民共和国大使館公使を勤めた宮家邦彦氏は「これは中国にとって黄金のチャンスだ。中国はワシントンより親しげな顔を示すことで、アメリカの影響力を打ち消そうとしている」と分析している。

また慶応大学の添谷芳秀教授は「鳩山首相は米国の影響力の低下を中国やその他のアジア諸国で相殺しようと望んでいる」と述べ、日本が中国と関係を改善することは、日本のアジアでの孤立を悩んでいた米国政府にとって必ずしも悪いことではないという。

ただしアナリストの中には、日本の中国に対する開放的な動きの背後に、鳩山政権の中に米国を「占領軍的精神」を持っていると敵意を持つ人がいることに懸念を示している人がいる。

この記事が日本の読者を意識している部分は、岡本行夫氏の「民主党は我々が朝鮮半島に持っている脅威と中国が軍事的には友好的な国ではないことを認識しなければならない」という言葉を紹介しているところだ。元外交官の岡本氏は自民党政権で外交アドバイザーを務めていたが、先月北沢防衛相が鳩山首相に彼を紹介し、安全保障問題についてアドヴァイスを行った。

またタイムズは添谷教授の「日本の新政権は中国寄りにスライドする前に真剣に考える必要がある」「鳩山首相は中国に頼るということが何を意味するか、またそれが本当に望ましいことなのかについて明確な意識を持っていない」という言葉を紹介している。

☆   ☆   ☆

勝手な推論を述べると小沢幹事長と検察側の攻防は、日本が親中国化するかどうかという大きな政治岐路を決めることになるかもしれない。勿論東京地検にそのような意識があるとは思わないが結果として小沢氏が権力の座に座り続けると親中国化が進み、小沢氏が権力の座を降りると少し冷静に中国と米国との距離の取り方を考える時間ができるだろう。

私は昨年の総選挙で民主党を選択した人の多くが、脱アメリカ・入中国まで選択したとは見ていないのだが、如何なものだろうか?

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中国は科学研究でも世界をリードする

2010年01月26日 | 社会・経済

昨今ファイナンシャル・タイムズを見ると、日本の記事が載らない日はあっても中国の記事が載らないことはまずない。世界が中国の一挙一動に注目しているということだ。今日目にした記事は中国が科学研究論文の発表件数で著しい伸びを示しているというものだ。

トムソン・ロイターの調査によると、科学研究論文の発表数の伸び率で中国は米国を抜いて世界一になった。もっとも2008年に発表された科学論文の絶対数では、米国は33万件強で中国の11万件強の3倍を誇るが、中国がこの勢いで論文数を伸ばすと2020年までに中国は世界一の科学的知識の生産国になると予想されている。

トムソン・ロイターはブラジル、インド、ロシア、中国つまり4つの新興国について科学研究論文の発表件数を調査しているが、それによると中国とブラジルの伸びが高く、インドは予想されたより伸びが低く、ロシアは停滞している。

中国が特に強いのは化学と物質科学の分野だ。一方ブラジルは健康、生活科学、農業、環境調査といった分野に強みを発揮している。

トムソン・ロイターによると中国の論文の質はマチマチだが、質は向上しているということだ。また発表された論文の約9%は米国の学者との共同研究によるものだ。

ロンドン王立協会のWilsdon氏は中国の科学研究が伸びている要因は3つあると述べている。第一は学校教育から卒業後の研究に至るまで政府が行っている巨額の投資だ。次が基礎科学から商業ベースへの利用まで系統だてられた知識の流れがあることだ。第三が北米や欧州に流出した中国人の頭脳集団を効率的で柔軟に利用していることだ。つまり彼等が年間の一部は欧米で働きまた一部は中国で働く・・・ということを認めることで流失した科学者を上手く利用している訳だ。

☆   ☆   ☆

今年中国のGDPは日本を上回る見込みで、一部の人はこのことを悲観視しているようだ。だが私は日本の10倍以上の人口を持つ中国がGDPにおいて日本を上回ることは自然な流れであると判断している。

靴やジーパンなど労働集約的な産品の輸出で世界を席巻してきたように見える中国だが、科学研究分野での成果はもっと注目する必要があるだろう。

日本が今必要なことは、科学分野への投資を高め、先端部門での競争力を失わないようにすることである。

GDPの絶対額で中国が日本を上回ることを悲観するより、彼等の知的情報の収集と活用を謙虚に学び日本の教育と研究を見直す必要があるのではないか?と私は考えている。

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