名護市長選で普天間基地の辺野古移転に反対する稲嶺氏が当選したことは、米国の外交筋にまた一つ懸念材料を増やした。ニューヨーク・タイムズはMartin Fackler氏の「米国は日本で中国のために外交基盤を失いつつある」という記事で、日本が中国シフトすることを警告している。
ただFackler氏が警告している相手は、米国人の読者のみならず日本人の読者も意識していると私には思われた。
米国人に対する警告は「オバマ政権は日本の政権交代によって、伝統的な保護者(米国)とライバル(中国)に対する考え方が変化した度合いを認識するのが遅い」というものだ。一方中国はオバマ政権より巧みに日本の新しい指導者達を取り扱った。中華人民共和国大使館公使を勤めた宮家邦彦氏は「これは中国にとって黄金のチャンスだ。中国はワシントンより親しげな顔を示すことで、アメリカの影響力を打ち消そうとしている」と分析している。
また慶応大学の添谷芳秀教授は「鳩山首相は米国の影響力の低下を中国やその他のアジア諸国で相殺しようと望んでいる」と述べ、日本が中国と関係を改善することは、日本のアジアでの孤立を悩んでいた米国政府にとって必ずしも悪いことではないという。
ただしアナリストの中には、日本の中国に対する開放的な動きの背後に、鳩山政権の中に米国を「占領軍的精神」を持っていると敵意を持つ人がいることに懸念を示している人がいる。
この記事が日本の読者を意識している部分は、岡本行夫氏の「民主党は我々が朝鮮半島に持っている脅威と中国が軍事的には友好的な国ではないことを認識しなければならない」という言葉を紹介しているところだ。元外交官の岡本氏は自民党政権で外交アドバイザーを務めていたが、先月北沢防衛相が鳩山首相に彼を紹介し、安全保障問題についてアドヴァイスを行った。
またタイムズは添谷教授の「日本の新政権は中国寄りにスライドする前に真剣に考える必要がある」「鳩山首相は中国に頼るということが何を意味するか、またそれが本当に望ましいことなのかについて明確な意識を持っていない」という言葉を紹介している。
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勝手な推論を述べると小沢幹事長と検察側の攻防は、日本が親中国化するかどうかという大きな政治岐路を決めることになるかもしれない。勿論東京地検にそのような意識があるとは思わないが結果として小沢氏が権力の座に座り続けると親中国化が進み、小沢氏が権力の座を降りると少し冷静に中国と米国との距離の取り方を考える時間ができるだろう。
私は昨年の総選挙で民主党を選択した人の多くが、脱アメリカ・入中国まで選択したとは見ていないのだが、如何なものだろうか?