雑誌「選択」に「『持たざる経営』を忘れたトヨタ」という記事が出ていた。自動車部門の他住宅事業など非本業部門も肥大化させたトヨタは負債総額12兆円という日本一の借金会社になったと記事は批判している。記事は「トヨタ『神話』の崩壊の先にトヨタの『衰亡』が待つとは俄かに信じがたいかもしれないが、思い返せば日本を代表する巨大企業の盛衰は実は目まぐるしい」と述べる。
記事の内容自体はそれ程目新しいものではない。だがこの記事を見て私はジム・コリンズのHow the mighty fall(邦訳はないが。題名を訳するならば「偉大な企業はどのようにして失墜するか」)を改めて思い出した。
この本のことについては今月号のNew Financeという雑誌に記事を書いたので、細かい話は避けるが、コリンズが引用していた「パッカードの法則」の話を紹介したい。
「パッカードの法則」というのは、ヒューレッド・パッカード社の共同創業者の一人パッカード氏が発見したもので「偉大な企業は選択肢の欠乏で死ぬよりは、多過ぎる選択肢の消化不良で死ぬ」というものだ。
トヨタのように知名度が高く、資金が豊富な会社は、何でもできるような錯覚つまり「多過ぎる選択肢」を持ってしまう。その結果は「選択」によると「連結子会社529社、持分法適用会社56社とまさにトヨタ財閥と揶揄されるまでに膨らみ」肥満体となってしまった。
豊田章男社長自身、「トヨタはHow the mighty fallの中の第4段階~つまり破綻(第5段階)の一歩手前~まできているのではないかという危機感を持っている」(エコノミスト誌)ので私はいつかトヨタは本業回帰をすると信じている。
昨今の日本の小売業を見るとユニクロにせよニトリにせよ特定の分野に焦点をあてた企業が元気で、フルラインの小売業は調子が良くない。これもまた好況期に「多過ぎる選択肢」に安住したツケが回ってきたということなのだろうか?
もっともこれは「偉大な」会社の話であろう。私のいる会社のように「偉大でない」会社の場合は、やはり選択肢の消化不良に悩むよりは目先の選択肢の乏しさに喘いでいるというのが実態である。