昨日(13日)から欧米のメディアを賑わせていたのは、グーグルが中国からの撤退も視野に入れて、中国当局に検閲撤廃を要求した件だ。
これに関する一番新しい情報は、14日の国務院情報省のトップ・Wang Chen氏が要求を拒絶したというニュースだ。
中国当局はグーグルの要求を拒絶すると観測されていたが、公式見解は少し間をおいて示された。私は中国当局はグーグル以外のIT大手企業の対応を見守っていたのではないか?と考えている。グーグルのライバル企業が歩調を合わせなかったので、中国政府は自信を持ってハードポジションを取ったのだろう。
例えばマイクロソフトのCEO・スティーブ・バルマー氏は「これはグーグル固有の問題である。総ての大きな組織はハッカー攻撃を受けている。これがインターネットの安全環境を根本的に変えるものとは考えない」と述べている。
またヒューレッド・パッカードのHurd CEOは「中国は巨大な成長性を持った魅力的な市場で昨年米国のIT業界の救いになった」「グーグルへのハッカー攻撃を持って、IT拡大への脅威になるとは言いたくない」と述べている。
米国のIT業界の大物の足並みが揃わなかったことで、中国政府はグーグルの要求を退け、インターネットの検閲を続けることを明確にしたと私は見ている。
ここから先は私の推測だが、グーグルは検閲撤廃の要求が拒絶されたので、中国市場から撤退することになるだろう。というのは「グーグルは、ハッカー攻撃とサイトの検閲を口実として、つまりビジネス上の理由と思われることなく、中国から撤退したいと考えていたのだろう」というエコノミスト誌の中の一つの見方に合理性があると考えるからだ。
グーグルは中国市場で6割のシェアを持つサーチエンジン百度Baiduとの差を縮めることができていないし、今後もできないだろうと予想されるからだ。グーグルが中国で上げる利益は微々たるものだが、コストは小さくない(エコノミスト誌)のである。だからこの機会に撤退するという見方だ。
中国政府はグーグルの検閲反対の声明がインターネットに流れた時制限をかけた。しかし中国のインターネット利用者は熟練し始めていて「ヴァーチャル・プライベート・ネットワーク」ソフトウエアをインストールすることなので海外のウエッブサイトを自由に閲覧できるようになっている。それでグーグルを支持する書き込みがインターネットのフォーラムにたちまち出てきた。
結局のところ国内サイトの検閲を通じて情報統制を図ろうとする中国政府の試みには明らかに限界がある。
またグーグルがこの時期に中国政府に検閲反対とサイバー攻撃問題を持ち出した裏には、米国政府の強い後押しがあったと見られる。米中間の数ある対立点の一つという訳だ。
このように考えると、グーグルの検閲撤廃要求というイベントは、実質的な問題というよりも、政治的な問題とみるべきだろうと私は考えている。