エコノミスト誌に「コラテラル・ダメージ」Collateral damageという記事があった。昨今の邦銀の株価急落を取り上げたものだ。表題のCollateralという単語を見た時「担保のことか?」と思ったがどうもしっくり来ないので、少し考えたところ、シュワルツネッガー主演の「コラテラル・ダメージ」という映画があったことを思い出した。テロに巻き込まれて妻子を失った主人公が犯人を捜すという内容だったと思う。調べて見るとコラテラル・ダメージとは「テロや武力行使に巻き込まれて生じる間接的な被害」という意味だ。Collateralには「担保」の他に「平行して」という意味がある。いやむしろこちらの方が一般的に使われるのかもしれない。
エコノミスト誌の記事の最後は、They are victims not of contagion,but of collateral damage.と結ばれていた。「彼等(邦銀大手行)は、サブプライムローンや証券化商品の汚染の犠牲者ではなく、その巻き添えで犠牲になった」という意味だ。
巻き添えの経路は次のようなものだ。
① サブプライム関連商品や信用リスクの高いハイイールドな金融資産のデフォルトリスクが高まったので、円を借りてそれらの資産に投資していた「キャリー・トレーダー」達は、円高を恐れて急速に手仕舞いを始めた。
②このキャリー・トレードの巻き直しや円への逃避のため、急速な円高が進んだ。急速な円高は輸出企業の業績悪化見通しにつながり、日本株が急落した。
③「株式持合い」で取引先の株を保有している邦銀は、急速な株安で評価損が資本勘定を圧迫する懸念が出てきた。(含み損の約6割をコア資本から控除する必要がある)
④昨日三菱UFJが1兆円(金額はラフ)の資本増強を行うというニュースが流れたが、これが銀行の脆弱さを想起させたり、希釈化が敬遠されたりで、邦銀大手株に激しい売りがでた。時価総額の大きい銀行株の下落は日経平均の急落につながるという負のスパイラルが起きた。
これがコラテラル・ダメージに至る流れだ。改めて世界の色々な市場が一つの船に乗っていると思う次第だ。
これからの銀行のリスク管理は正面の敵だけではなく、予期せぬテロや武力騒動に巻き込まれるリスクもシナリオの中にいれなくてはならない様だ。