金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

証券化廃れて、銀行は原点復帰

2008年07月29日 | 金融

アメリカでローンの証券化市場が停滞している。銀行の自己資本が毀損していることと相まって、アメリカの企業向け融資が減少している。ゴールドマンが連銀の資料を分析したところでは、6月半ばには年率換算で6%以上企業向けローンが減少している。

4月に連銀がシニア・ローン・オフィサーに調査をかけたところでは、55%の米銀が大企業・中堅企業向け融資基準を引き上げていた。また7割の回答者がローン金利を引き上げていると回答した。

昨年夏まで米銀はほとんどフリーパスで融資を行っていた。何故なら彼等は実行したローンの大半を証券化で売却していたので、ローンの返済状況に余り関心がなかったのだ。

ところがここに来てローンを証券化して販売するルートがふさがれているので「銀行は与信先をしっかり調査する動機付けがされている」とニューヨーク・タイムズは述べている。

この話は不動産担保に頼りきった日本のバブル期の話を彷彿とさせる。バブル期の日本の銀行は不動産価値に重点を置き、企業の経営内容やキャッシュフローについてまともに審査をしなかった(例外はあるだろうが)。その結果不良債権を沢山作るとともに、企業審査の出来ない融資マンを沢山作ったのである。

今回のモーゲージ・SPVバブルは、アメリカで手っ取り早くローンを実行して、証券化することに長けた金融マンを生み出したが、企業審査は等閑視された。長い期間の黒字決算を求めるなど貸出バーが高くなると、特に中小企業向け融資が減少する。中小企業向け融資の減少は、雇用削減や増産の足かせになり、景気の悪化を加速させる。

しかし長い目で見ると、企業融資をちゃんと審査することが出来る融資マンを育てられるのでプラスの面もある。もっとも日本ではバブル崩壊の反省から企業融資ができる銀行マンが育ったかどうかというとあまり良い結果は出なかったと思う。私の限られた経験に基づく独断だが。

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ブッシュの置き土産、巨額の赤字

2008年07月29日 | 国際・政治

もう少しでブッシュ大統領の任期が切れるが、彼の次期大統領への最大の置き土産は巨額の赤字だとニューヨーク・タイムズは報じている。

米国の財政赤字は2007年度が1,620億ドル、2008年度は3,890億ドルの予想、2009年度には更に赤字は書く出して4,820億ドルになる見込みだ。(米国の国家会計年度は9月スタート)

4,820億ドルという赤字は絶対額では史上最高の赤字になる。たいGDPでは約3.3%で、GDP対比では1983年の6%の赤字などと較べるとまだましだ。しかしこの赤字予想はイラク・アフガンの軍事費や景気浮揚対策コストをフルに反映していない。また今話題になっている政府によるファニーメイ・フレディマックの事実上限度のない救済コストも予想の中に含まれていない。(下院予算事務局は向こう2年間で250億ドルの財政赤字要因になる可能性があるとしている)

ブッシュが2001年に大統領に就任した時は財政は黒字だった。将来彼の8年間は出口の見えないイラク・アフガン紛争、住宅市場の崩壊、オイルと穀物の暴騰と巨額の財政赤字で特徴付けられるだろう。

これだけ赤字が大きくなると、次の大統領にマケインがなるにしろオバマがなるにしろ、財政の制約が大きくて新しい政策が制約を受ける。しかし金があると兎角アメリカは戦争をしたがる傾向があるから、金がない方が良いのかもしれない。

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Take a toll (イディオム・シリーズ)

2008年07月29日 | 英語

Tollとは「通行料」「犠牲者数」などの意味がある。Take a tollで「損失をもたらす。悪影響を及ぼす」という意味だ。ニューヨークタイムズ(NT)に次のような文章が出ていた。Fuel subsidies overseas take a toll on U.S. 「海外の燃料助成金は米国に損失をもたらす」という意味だ。

アジアの発展途上国はインフレの進行と抗議デモを恐れて、燃料に助成金を出して原油価格の高騰を緩和しようとしている。石油会社のBPによると世界の石油消費が増えている国の96%は助成金を出している国である。助成金を出さない国では、ユーザーは自助努力でオイルの消費量を減らそうとするが、助成金が出ているとこの「市場の規律」が働かないというのがNTの主張だ。

政府が補助金を出しているのは、ガソリンや軽油だけではない。アジアの発展途上国ではケロシンにも補助金を出している。ケロシンはアジアでは調理用燃料として使われるが、ジェット燃料と同じ成分だ。インドでは助成金のおかげでアメリカでガロン当たり5ドルするケロシンが97セントで買うことができる。インドの経済成長のおかげでケロシンの利用が増え、その結果ジェット燃料の価格が上がっている。

なおニューヨークタイムズはアジア諸国の燃料助成金だけが燃料価格上昇の犯人だと言っている訳ではない。アジアの経済成長や米国とイランの緊張など色々な要素の一つであると主張しているのだ。

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