アメリカでローンの証券化市場が停滞している。銀行の自己資本が毀損していることと相まって、アメリカの企業向け融資が減少している。ゴールドマンが連銀の資料を分析したところでは、6月半ばには年率換算で6%以上企業向けローンが減少している。
4月に連銀がシニア・ローン・オフィサーに調査をかけたところでは、55%の米銀が大企業・中堅企業向け融資基準を引き上げていた。また7割の回答者がローン金利を引き上げていると回答した。
昨年夏まで米銀はほとんどフリーパスで融資を行っていた。何故なら彼等は実行したローンの大半を証券化で売却していたので、ローンの返済状況に余り関心がなかったのだ。
ところがここに来てローンを証券化して販売するルートがふさがれているので「銀行は与信先をしっかり調査する動機付けがされている」とニューヨーク・タイムズは述べている。
この話は不動産担保に頼りきった日本のバブル期の話を彷彿とさせる。バブル期の日本の銀行は不動産価値に重点を置き、企業の経営内容やキャッシュフローについてまともに審査をしなかった(例外はあるだろうが)。その結果不良債権を沢山作るとともに、企業審査の出来ない融資マンを沢山作ったのである。
今回のモーゲージ・SPVバブルは、アメリカで手っ取り早くローンを実行して、証券化することに長けた金融マンを生み出したが、企業審査は等閑視された。長い期間の黒字決算を求めるなど貸出バーが高くなると、特に中小企業向け融資が減少する。中小企業向け融資の減少は、雇用削減や増産の足かせになり、景気の悪化を加速させる。
しかし長い目で見ると、企業融資をちゃんと審査することが出来る融資マンを育てられるのでプラスの面もある。もっとも日本ではバブル崩壊の反省から企業融資ができる銀行マンが育ったかどうかというとあまり良い結果は出なかったと思う。私の限られた経験に基づく独断だが。