ファイナンシャル・タイムズによると、幾つかの世界最大級のソブリン・ウエルス・ファンドが米ドルのエクスポージャーを削減する動きを取っている。あるアラブのソブリンファンドはドル建の投資を8割から6割に落としている。
中国外貨管理局やカタール投資庁は、ドルのエクスポージャーを落とす方法として、欧州のプライベート・ファンドへの投資を高める方向にある。もっとも中国は1兆6千億ドルの外貨準備の大部分を米ドル債券で保有しているので、下手に動くと市場を混乱させ自らの資産価値を下落させる可能性がある。
これらに動きの背景には、米国の連邦銀行と財務省に対する信頼が低下していることにある。ソブリン・ウエルス・ファンドは米国の銀行の資本増強について主導的な役割を果たしてきた。しかし今のところこの投資は含み損になっている。もしこの上ファニーメイ債やフレディマック債の流動性(換金性)に懸念がでるようなことがあるとソブリン・ファンドに大混乱が起きることは間違いない。
もっともアラブ諸国の動きも一様ではない。クェートは昨年通貨のドルリンクを止めたが、アラブ首長国連邦はドルペグを続けている。アラブ首長国連邦の中のアブダビ投資庁のスタッフはユーロはドルに対してピークを付けているかもしれないと懸念を示している。
これらのことは当然米国の連銀や財務省の頭の中に十分入っている。米国が金融システムと安定とそれによるドルの安定のために、どれだけ痛みに耐えるか言い換えるとどれだけ税金を投入するかが注目されるところだ。