フリーターは和製英語である。自由を意味するFree又はフリーアナウンサーのような自由契約を意味するFreelanceと「働く者」を意味するドイツ語Arbeiterを合成して作った和製英語である。今現在フリーターFreeterが英語として通じるかどうかは微妙なところだ。例えばインターネットの英語辞書Dictionary.comで調べると「該当なし」という答が返ってくる。しかしUrban Dictionary.comという俗語辞典で調べると「主に低賃金で働く20代のパートタイマーを指す日本製の言葉」という説明がなされている。余談になるけれどこの辞書によるとFreeterには「駐車時間が残っている空きパーキングメーター」という意味がある。これは知らなかった。知っている人は相当な英語通だろう。
ところでどうして「フリーターが英語になる日」という題をつけたかというと、昨日(7月9日)のファイナンシャルタイムズに「フリーター」のことがFreeterとして出ていたからだ。権威ある新聞が使い出すと和製英語でも英語として認められていくだろう。もっとも公式に定義された「フリーター」は、かなり日本固有のものだから、フリーターが「カラオケ」や「津波」などのように英語化するかどうかは分からない。
厚生労働省による「フリーター」の定義は「年齢15歳から34歳で就学していなもの」「女性の場合は未婚」「就業しているものの場合は勤務先での呼称がアルバイト・パート」「無職のものについてはアルバイト・パートを希望するもの」である。
フリーターに該当する英語はあるのだろうか?当然のことながら厚生労働省の定義にぴったり合う英語はない。フリーターに一番近い概念はUnderemploymentだろう。これは「不完全雇用」と訳されるが、雇用環境などから自分の能力以下の職についている雇用者を指す言葉だ。ただしUnderemploymentに年齢制限はない。
フリーターの特徴と問題は日本の労働慣行と深く結びついている。学校卒業後フリーターになって数年過ごすと、企業の正規雇用者になることが難しくなる。何故なら日本の企業は新規卒業者を優先的に採用するからである。米国など雇用の流動性が高い国では、一時的に職を失ったりあるいは非正規雇用者になっても、再び正規雇用者になる可能性は高い。企業は新卒採用にこだわらないので、不況で卒業時に正規雇用されなかったものでも、リカバリーのチャンスは日本よりもはるかに高い。従って厚生労働省の定義に基づくフリーターという言葉が世界的に流布するとは考えにくい。
フリーターは「パラサイト・シングル」Parasite singleと表裏一体をなす関係にある。パラサイト・シングルも和製英語だが、20代・30代の子供が親を頼って暮らす現象はイタリアやドイツでも増えているようだ。
広い意味では「フリーター」という現象は世界的に広がっているので、Freeterがもっと「英語」になる可能性は高い。それが誇るべきことかどうかは別として。