ニューヨーク・タイムズ(NT)がシグマが出したDP1というデジカメに批評を加えていた。NTが面白いのは、一般紙でありながらデジカメについてかなり詳しい批判を加えていることだ。このこだわりがNTを価値あるペーパーにしている。
さてシグマのDP1だが、このカメラはコンパクトカメラでありながら、一眼レフ並みのセンサーを搭載した世界最初のカメラである。センサー(CDD、CMOSなど)はカメラのレンズから入った光を電荷に変換して、それをデジタルデータに変えている。画像をデジタルデータで表すためには、画像を細かく分割し(その分割した領域を画素という)、一つの領域を一つの色で表す必要がある。従って画素数が多いほどキメの細かい画像が得られることになる。
ところが画素数(ピクセル)が多ければ多いほど良いかというとそうではない。例えば今私が使っているラップトップ型のパソコンの画面は192万画素である。(パソコンのコントロール・パネルを開き、「画面」をクリックすると1200×1600ドットという表示がある。ドットは点で1200×1600=192万の点があるということだ)
このパソコンで写真を見る場合、192万ピクセル以上のカメラで写真を撮っても違いはでないということだ。同じことは紙に写真をプリントする場合もいえる。カメラメーカーは1千万画素のカメラなどという様に画素数の多さを宣伝文句にするが、使用目的からいうとオーバースペックのことが多いだろう。
むしろ画像の質を決めるのはセンサーの大きさである。センサーが大きいと銀塩カメラのように明暗差の大きい景色を白トビすることなく、写すことができる。一般にコンパクトカメラのセンサーはデジタル一眼レフの1/10位なのでどうしても画質に限界があった。
NTは何故今までカメラメーカーがコンパクトカメラに大きなセンサーを搭載させなかったか?ということについて幾つかの理由を挙げる。一つはセンサーは高額なので大きなセンサーを搭載するとカメラが高くなるということだ。(DP1は8万円位)
次にカメラメーカーは長年「ピクセル数が大事だ」と言ってきたが、「センサーの大きさが重要だ」と主張を変える必要があるということだ。3番目はデジタル一眼レフとの兼ね合いである。一眼レフ並みの画質を持つコンパクトカメラを売り出すと一眼レフはどうなるのか?ということだ。
私はこのDP1というカメラを触ったことがないので、NTやメーカーのHPあるいはカメラの専門家のブログの評価を参考にしているが、中々ユニークというか一般受けしないカメラのようだ。
まず「レンズが単焦点」ということだ。つまりズームがない。NTはこれがDeal killerという。つまりズームがないと一般の消費者は買わないということだ。またこのカメラが全般に遅いらしい。スイッチを入れてからの立ち上がり、焦点が合う時間そして1枚撮って次の写真が撮れるまでの時間。なんとJPEGで2秒、RAWになると7秒もかかるということだ。
その他NTは次々と欠点を指摘する。「ビューファインダーがない」「日の光のもとでスクリーンが見難い」「フル・マニュアルコントロールだ」「手振れ防止がついていない」等などとニューヨーク・タイムズはかなり手厳しくこのカメラを評価している。プロカメラマンの横木安良夫氏はホームページで「敷居が高いけれど、銀塩カメラ並みの写真を撮ることができるカメラ」ともう少し好意的だ。
私個人としては8万円も出して、シグマのDP1を買うことはないと考えている。このカメラのメリットはコンパクトで一眼レフ並みの画質ということだが、一眼レフでもオリンパスのE420などのようにコンパクトなカメラがあるので、それを使う方がよさそうだ。オリンパス派の私だが、持っていない交換レンズに今年の春、出た25mmF2.8という単焦点レンズがある。パンケーキと呼ばれる薄いレンズで、これとE420などを組み合わせると軽快そうだ。
こう考えるとDP1はどのような人をターゲットにしたカメラなのか疑問がわいてくる。