昨日(5月3日)発表された米国の雇用統計は市場予想を上回る好調な数字。非農業部門雇用者数は市場予想140千人を上回る165千人で、2月、3月の数字もそれぞれ236千人→332千人、88千人→138千人に上昇修正された。また失業率は0.1%低下して7.5%に下落。これは2008年12月以降最低レベルだった。
S&P500は終値で史上始めて1,600ポイントを超えた。またダウはザラ場で15,000ポイントを超えたが終値は14,973.96ポイントだった。ちなみに海外の経済専門紙はダウよりS&Pの数字に注意を払っている。これは日経平均とTOPIXと同じ関係だ。日経新聞やテレビ東京のモーニングサテライトがダウに注目し、S&P500を軽視するのは、「日経平均」大事・・・ということなのだろう。
さてブルンバーグ(英語版)に「なぜ米国の非農業部門雇用者数は過去分が修正されるのか?」という話が出ていた。マーケットに携わったことのある人なら(私を含めて)誰でも知っている話なのだが、そこにアメリカ人の統計重視の考え方が見られるので敢えて述べてみよう。
米国の労働省・労働統計局BLS Bureau of Labor Statisticsが毎月第一金曜日に発表する雇用統計は失業率と非農業部門雇用者数Non- Farm Payrollsがある。
失業率は家計調査と呼ばれ約6万世帯の家計のサンプル調査で算出される。非農業部門雇用者数は全国557千の民間・公的事業所(約8割をカバー)の給料支払データから集計される。給与支払いpayrollが行われると各事業所は統計局に報告を行う。ところで米国の給料支払い慣行は毎週払い、2週間払い、毎月払いとバラバラ。家計の運転資金を蓄えている人が少ないので週払いや2週間払いが選好されるのだ。週払いの雇用者増は翌月の統計に反映される可能性が高いが、2週間払いの雇用者増は翌月の統計に反映されないので、翌々月以降修正が行われるのである(週払いより2週間払いの方が多い)。
ということで毎月2月前、3月前の雇用者数の増減が修正される非農業部門雇用者数統計だが、次の理由で極めて市場が着目している統計なのだ。
・サンプル調査である失業率はサンプル数が少なく実態を反映しないリスクがあるが、全国の事業所から力技でデータを集めてくる雇用者数統計は信頼性が高い。
・翌月以降修正される可能性は極めて大きいが、速報性に優れている。また連続性がある。
ここにはアメリカ人の特性が現れている。つまりサンプルではなく事実そのものを重視する。速報性を重視する。つまりできるだけ事実に即したデータを素早く集めて、共有して、判断材料とする、ということだ。その考え方が経済・政治・軍事面に浸透していて、民主主義と市場経済主義を支える重要な柱となっているのだ。