金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国、新卒者の就職難というリスク

2013年05月16日 | 社会・経済

昨日(5月15日)米国で発表された鉱工業生産指数は8ヶ月ぶりの大幅低下となった。長引く欧州の不況や中国の成長鈍化の影響で米国の製造業の落ち込みが目立ってきた、というところだ。本来なら株は売られても良い、と思うのだがダウは60ポイント高で引けた。景気が鈍化すると連銀がQE3を持続するので金融相場は続くという判断である。恐らくその可能性が高いと思うが、「人は自分の見たいものだけを見ている」リスクを感じないでもない。

日米中心に積極的な金融政策で景気浮揚を図り、投資家に安心感を与える一方、消極策で投資家を失望させているのが中国だ。

中国の昨年の経済成長率は過去13年で最低の7.8%だった。野村證券のエコノミストによると、第二四半期の成長率は7.5%程度となる見込み。しかし李克強首相は「今年の経済成長目標達成については、景気刺激策や政府の直接投資に依存する部分は大きくなく、市場メカニズムに依存する必要があるだろう」と述べている。

ところでFTの記事によると、習近平主席や李克強首相は今年7月に始まる新卒者の就職活動に強い懸念を示している。新しく就業を目指す卒業者の数は7百万人と史上最大の数だが、先月下旬時点で就職が決まっているのは北京の学生で28%、上海で29%、広東省で47%ということだ。

共産党幹部が新卒者の就職動向に注意を払っている理由は、中国の現代史では欲求不満を持った学生たちの行動が、文化大革命や天安門事件を引き起こすなど大事件の引き金になっているからだ。

不動産バブルの拡大懸念や公害リスクから積極的な景気浮揚策が取りにくい中国だが、そちらのリスクを抑えようとすると、若者の雇用に対する不満が臨界点に達するリスクがある。

ところで中国が公表している都市部の失業率は4.1%だが、これは新卒者を含まないなど全く信頼性の置けない数字だ。中国に必要なことは「見せたいものだけ見せる」政策ではなく、不都合な真実を国民が共有する姿勢だ。もしアメリカが弾力性の高い社会と経済システムを備えているとすれば、それは不都合な真実にも目を向けよう(もちろんアメリカでも不都合な真実は隠蔽されていることは多いだろうが)とする姿勢、ゆえであろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする