金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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年金担保の悪質高利貸し、洋の東西を問わず

2013年05月08日 | ニュース

犯罪にはスリなど世界共通型の犯罪と「オレオレ詐欺・振り込み詐欺」のように比較的特定国(この場合日本)固有型の犯罪があると思う。その背景には「家族、とくにお祖母ちゃんと孫のあり方」「性善説的な社会のあり方」「高齢者が保有し、簡単に動かすことができる現預金の多さ」など日本社会の特質がある(もっとも他の国にも振り込み詐欺はあるという説もある)。

さて今日のテーマは「年金担保の悪質高利貸し」は洋の東西を問わず、という話。日本では「偽装質屋が年金担保に高利貸しを行ない、強制捜査を受けた」事件がニュースになったことがある。米国では「ニューヨーク州の金融サービス監督局が10社の年金前払会社に召喚状を送った」という記事が今日読んだニューヨーク・タイムズに出ていた。

年金前払会社はPension Advance firmsの直訳で、本質は退職者の将来の年金受給権を担保にとって融資を行う会社である、というのが当局の解釈だ。もっとも年金前払会社側は「いや年金担保融資じゃない。あくまでもloan じゃなくてadvance(前払金)だ。」と言っている。記事によると退職者がキャッシュを受け取る時に差し引かれる手数料等を考慮すると実効金利は27%から106%にもなるというから、立派な高利貸しであることは間違いないだろう。

年金前払会社の犠牲になっているのは、職業軍人や学校の先生、警察官など固い仕事を務め上げて退職した人たち、ということだ。どうしてこれらの人が犠牲になるのだろうか?ということを私なり推測してみた。

・将来確実に入ってくる年金給付はあるが、手元に不意の出費(たとえば入院費用)を賄う資金がない。だから不意の出費が発生した時年金前払会社に駆け込む。

・もともとこれらの職業の人は金融literacyが低く、年金前払が高利であることに気づいていいない。また性善説的な考え方をする人が多い。

☆   ☆   ☆

経済犯罪は、加害者の方が被害者より悪知恵が働くのが常だ。一般には「専門家」と思われていた日本の厚生年金基金のような法人でも、AIJのような悪質な業者にはコロリと騙される。

お金のあるところを狙って、小賢しい人は色々な手口でアプローチする。詐欺や窃盗はあきらかに犯罪だが、「顧客の利益に見せかけて自分の利益も混ぜておく」ような行為~例えば運用利回りが高そうで(将来のことだから分からないが)、手数料も高い(こちらは確定的)な商品を顧客に勧めること~は見分けが難しい。金融商品に限らず、顧客のニーズを超える高額商品が販売されることは多いだろう。賢く生きることは難しい、と思う。

高齢化社会にはそのような難しさが伴っている。それはおそらく洋の東西を問わない問題だろう。

コメント
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