昨日(5月17日)のダウは121.18ポイント(0.8%)上昇、S&P500は17ポイント(1%)上昇してともに未踏の領域へ。
株価を押し上げたのは、消費者信頼感指数とカンファレンス・ボードが発表した景気先行指数だった。5月の消費者信頼感指数は市場予想の77.9を上回る83.7でこれは2007年6月以降で一番高い数字だった。これを受けてドル円為替は1ドル103円を超えるドル高となった。
急ピッチでドル高が進んでいるが、今のところ米国からドル高・円安に対する大きな不満は聞こえてこない。その理由を推測すると、今の米国においてドル高がもたらすメリットが相当大きいのだろう、という一つの答が見えてくる。
ではどういう場合にドル高・円安は米国にメリットがあるのか?というと、「為替レートに関係なく輸出量が確保できる商品があれば、ドル高は米国に利益をもたらす」のである。一般に通貨高になると価格競争力が低下するので、その国の商品は売れにくくなる。だから日本の家電メーカーや自動車メーカーは円高時代に苦労してきた。
一方円高は資源輸入大国日本にとって海外の天然資源を安く買うことが出来るというメリットがあった。日本のメリットは資源輸出国のデメリット。そして逆も又真である。
資源というと注目されるのが、米国の液化天然ガス(LNG)だ。昨日三井物産、三菱商事・日本郵船は、フランスのGDFスエズとともに、キャメロンがルイジアナに建設するLNG輸出プラントに建設資金提供という形で出資することを決めた。出資割合は物産16.6%、商事・郵船16.6%、GDFスエズも16.6%だ。この海外出資グループは90億ドルから100億ドル要すると推定される建築コストの内、60億ドルから70億ドルを負担するものと予想されている。
米国では自由貿易協定(FTA)未締結国に天然ガスを輸出するには、エネルギー省の許可が必要だが、規制は早期に緩和されると見込まれている。既に物産等出資グループは、LNGの購入契約を締結しており、2017年から輸出が始まる予定だ。
日本は天然ガスの世界最大の輸入国だ。日本にとって天然ガスは円安になろうとも、簡単には購入量を減らすことができない輸入材だ。それだけに米国の天然ガス輸出業者にとっては円安・ドル高は非常なメリットである。
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ドルという決済通貨を握っている米国は、他国の為替操作については厳しくチェックしている。一方ドル高・ドル安については、為替市場への直接介入といった野暮な方法は取らないが、ドル札を大量発行する・ドルの流通量を減らすという金融政策を通じてある程度の水準コントロールが可能だ。
それを真似したのが今回のアベノミックスで、米国を上回る勢いで市場に円を供給する、と言ったから円安が起きているというのが大方の解釈だ。だが規模は別として日銀は今まで緩和政策を取って来なかった訳ではない。だが中々円高に歯止めがかからなかった。
それがなぜ今回はスルスルと円安が進むのか?その背景に私はアメリカのドル高容認姿勢があると見ている。
もしドル高で巨大な利益を得る利益集団が、日米の政策担当者に働きかけて、日本の大胆な金融緩和策の振り付けを行なっているとすれば、面白そうな経済小説がかけるのだが・・・・