金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

選挙に反応しない市場の問題

2007年07月19日 | 国際・政治

今の日本の株式市場を見ていると、今月下旬の参院選挙の行方に余り反応していない様な気がしてならない。新聞等が報じるところであれば、自民党のかなりの敗北が予想されるが、これは素直に見ると株式市場にはマイナス要因と思うのだが、今のところこの材料に余り反応していない様に見えて仕方がない。

ファイナンシャルタイムズなど海外の一流紙も自民党の敗北が市場に与える影響をまだ本格的に論じていない様だ。むしろ日本の株式市場はバーナンキ連銀議長の議会証言やアメリカの個人住宅の販売具合に一喜一憂しているのである。

本来安倍政権の敗北は小泉内閣以来進めてきたネオアメリカ型資本主義に国民が一定のブレーキを求めたことを意味し、改革の後退につながり企業収益にはネガティブな影響を与えるはずだ。それなのにどうして株式市場は余り反応しないのだろうか?

考えられる一つの理由は、日本の政治そのものが国民の信頼を失っているということが考えられる。自民党が勝とうが民主党が勝とうが余り変わらないという変な諦観。それよりもアメリカの住宅販売や中国の株価の方が気になるということでは、日本の政治は軽すぎのではないだろうか?

その責任は例えば財政赤字等この国が抱える難問に毅然たる取り組み姿勢を示さない政治家にあると言える。つまり選挙に勝つことだけを考えた政治家の空論に国民はうんざりしているという訳だ。そしてその頭のどこかに「どうせ徹底的に悪くなれば、また外圧で抜本策をとることになるさ」などという考えがあるとしたら、まことに恐ろしいことである。

ひょっとすると与党の敗北を予想して下落する相場の方が、与党の敗北を予想しても下落しない相場より健全なのかもしれない。

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中国の外銀、美味しい日は続くか?

2007年07月19日 | 金融

ファイナンシャルタイムズ(FT)によると、中国の外銀の利益は2007年の最初の5ヶ月で年率換算43%の勢いで伸びている。もっとも利益の絶対額はたった4億ドルでそれを75行で分けている次第だが。

昨年末中国政府は現地通貨業務を希望する外銀に対して、新しい管理基準を定めた。その負担が大きく多くの銀行は現地通貨業務の開始が遅れ、僅かに12行のみが取扱を開始している。積極的なのはシティで今週20番目の店舗をオープンした。これは裕福な自営業者をターゲットしたものだ。

三菱UFJは85%から90%は中国に進出している日本企業との取引が狙いだ。しかし総ての外銀は3億人から4億人にのぼる潜在的な個人客に注目している。潜在顧客層の内5千万人から1億人は中産階級またはそれ以上だろう。

今のところ外銀は「預金の75%を越えて貸出をしてはいけない」という規定を適用除外されるという特典を得ているが、その特典期間が過ぎると預金量を確保しなければならない。又規制金利のため高い預貸スプレッドを享受しているが、いずれなくなるだろう。中国の国内銀行との競争も厳しくなってくるだろう。

と考えると中国のリテイル市場の潜在的魅力は大きいが、多くの銀行が勝ち残る程には大きくないかもしれない。

それにしても、リテイル業務のみならず資産運用業務~特に国家の年金基金の運用受託~などあらゆる面で邦銀は全く外銀に遅れている。その遅れは5年、10年先に更に大きな差になるだけに歯がゆい気がしてならない。

談合はいけないが、総ての邦銀がコンソーシアムを組んで中国に出る位で初めて外資に対抗できるのかもしれない。

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日英で違う議長発言の見出し

2007年07月19日 | 金融

FRB(米連邦準備理事会)のバーナンキ議長が18日、下院金融サービス委員会で証言したことを新聞が報じている。面白いと思ったことは日経とファイナンシャルタイムズ(FT)で見出しが全くことなることだ。

日経は「米金利、当面は据え置き」でFTは「連銀議長は信用リスク懸念を認める」というものだ。ちなみにFTの原文はFed cheif acknowledges credit fearsである。

FTは見出しに続き「バーナンキ議長は水曜日に始めて『投資家が国債等信用力の高い資産へ逃避を模索し、信用懸念がサブプライム市場を越えて広がっている』ことを認めた」「もっとも同議長は金融状況は全般に良好なので米国経済への影響は少ないと述べた」と報じた。

この日英を代表する経済紙の見出しの違いについて考えてみよう。一つはサブプライムローンを含むハイリスクアセットに対する読者のエクスポージャーの違いがあるだろう。たとえば今サブプライム問題ではベアスターンズの二つのファンドがほとんど無価値になったことが有名だが、オーストラリアでもベーシス・キャピタルのイールド・ファンドというファンドが破綻寸前になっている。オーストラリアの経済人はFTを読んでいるだろうから、サブプライムの問題をより日経よりFTがフォーカスしていると考えられる。

因みにイールド・ファンドはレポ取引で担保価値が下落したので、貸し手から追証を求められたが、応じることができず差し押さえを受け、リストラ・アドヴァイザーが選任された。

ところで日本の投資家や金融機関がサブプライムのリスクがないか?というとそうではあるまい。いまやあらゆるレベルで日本の投資家や金融機関はヘッジファンドにコミットしているので、サブプライムへの間接的エクスポージャーはそこそこあると考えるべきだろう。

気になることは日経が世界の金融市場に忍び寄るリスクに対して、能天気であることだ。そしてその新聞を読んでいる一般投資家に能天気さが伝染することである。リスクに過剰反応して狼狽してはいけないが、鈍感なことも問題である。

それにしても新聞というものは怖いものだ。見出し一つで連銀議長の証言の受け止め方が全く異なってしまう。本当に正しく理解するには証言そのものを読めば良いのだが、そこまでの時間はないので、やはり信頼できる新聞を読むということに尽きるのだろう。

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