欧米の金融市場でクレジット・クランチの懸念からローンのプライマリー市場が急速に収縮し買収ブームが収束に向かうという観測が広がっている。英国の買収ファンド・キャンドバー社によると、今年の第二四半期に620億ユーロに達した買収ブームはピークアウトしたということだ。
投資家はリスクに比べて小さいリスクプレミアムを回避しだした。その象徴的な出来事が、昨日銀行団がクライスラーとアライアンス・ブーツの買収ローンの投資家向け販売に失敗したことだ。
ファイナンシャルタイムズ(FT)によると、銀行団はサーベラスがダイムラー社からクライスラーを買収する資金を200億ドル用意し、120億ドルを投資家向けに外売りする予定だったが、失敗して暫く在庫として抱えることになった。
英国でも小売業のブーツ社に関する買収ローンを売却する予定だったが、こちらも失敗して引受手数料を吐き出してなお損をするという状況の様だ。
銀行がリスクの高い買収ローンを投資家に売却できなくなると、新たな買収ローンの引受が出来なくなるので買収ブームが終わるという訳だ。
しかし私はこのことを健全なことだと考えている。コベナンツや返済条件をユルユルにしたCov liteローンや米国のサブプライムローンは、明らかにデッドのバブルであった。今そのバブルが弾けつつあるが、それが市場の自浄作用というものである。それがdisciplineのある金融市場というものだろう。
ただ気をつけないといけないのは、狡すからい外銀の中には市場の潮の変わり目に疎い日本人にババをつかまそうとする連中がいることだ。これから暫くはクレジットスプレッドが広がることを念頭に入れておく必要がある。当然株式市場でもクレジットが低い銘柄を中心にセルオフが激しくなるだろう。
参院選の自民党敗北も悪材料だし、しばらくは株式市場に好材料はないかもしれない。