金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

朝三暮四の年金記録対策費

2007年07月06日 | うんちく・小ネタ

今日新聞を見たら柳沢厚生大臣が「年金記録不備対策費に年金保険料を使わない」と発言していた。しかしこれ程国民を愚弄した発言はない。

年金記録不備を修復するには少な目に見積もっても、数百億円から一千億円の費用がかかる。その金が年金保険料でまかなわれないなら、誰がまかなうのであろうか?それは税金で賄われるのである。そもそも我々国民にとってそれが年金保険料であれ、税金であれ我々の負担であることには変わりはない。給料袋を見ると「控除」項目の中で厚生年金保険と所得税は直ぐ近くに並んでいる。

また年金の支給は保険料だけで賄われている訳ではなく、税金も使われている。つまり国民にとっても国にとっても、税金だの保険料だのと区別する必要はあまりない。いずれにせよそれは所得を再配分する機能なのである。

柳沢大臣の様に子供だましのような説明で、人を丸め込むことを「朝三暮四」という。

朝三暮四は中国の故事だ。昔宋の国に狙公(そうこう)という猿好きな男がいた。あんまり沢山の猿を飼い過ぎ、餌代に困ってきたので狙公は猿達に「これからは餌を朝3つ夜4つにする」と言ったところ猿達は怒り出した。そこで狙公は猿達に「分かった。それでは餌は朝4つ夜3つにする」というと猿達は納得した。

目先のことしか分からない猿は朝の餌が増えたので納得したのである。もし柳沢大臣が自分の説明で国民が納得するとでも思っていたら、国民を狙公の猿程度に見ていることになる。これ程人を愚弄した話はないのである。

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知の難きに非ず

2007年07月06日 | うんちく・小ネタ

久間防衛相が「原爆発言」で辞任したことを見た時、韓非子の「知の難きに非ず 知を処するのすなわち難きなり」という言葉を思い出した。

韓非子の言葉の意味はこうだ。「知識を得たり、ものごとを理解することが難しいのではなく、得た知識をどう使うかが難しいのだ。」ということだ。

韓非子には二つの具体例が出ているがその一つを紹介しよう。鄭の武公の話である。武公は胡の国を討とうとひそかに思っていて、相手を油断させるために娘を胡の王に嫁がせた。そうしておいて群臣に「戦争しようと思うがどこを討つのが良いか?」とたずねた。するとある大臣が「胡の国が良いと思います」と答えた。武公は「胡は娘を嫁がせている国で兄弟のようなものだ。その国を討てとは何事か!」と怒ってその大臣を死刑にした。胡の王はこの話を聞いてすっかり安心し、武の国に対する警戒心をといた。武の国はその隙をついて胡を占領した。

久間前防衛相の「原爆投下はしかたがない」という発言だが、実は多くの歴史学者が「アメリカによる原爆投下で日本の無条件降伏が早まった」ということは認めているところである。さらにいうともし昭和20年8月15日に日本が降伏しなかったなら、ソ連が北海道に侵攻していたというのも、多くの歴史学者が認めるところであり、私もこの見解を取っている。もしソ連が侵攻していたならその犠牲者は原爆投下による犠牲者を上回っていただろうということも容易に推測できることだ。

しかし日本特に被爆地である長崎の人々の感情からすれば、このような歴史的事実を持って、原爆投下を容認することは許せないものだった。

久間氏について私は関心も知識もないので、どれ位歴史を勉強したのか知る由もない。しかし原爆投下の歴史的意味を理解する程度に歴史を勉強するのであれば、ついでに韓非子も読んでおいたら良かっただろう。

もっとも権謀術数のバイブルの様な「韓非子」を書いた韓非であるが、最後は秦の李斯の讒言に会い、自殺の追い込まれた。それをもってしても「知に処すること」が難しいことが分かるのである。

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