エコノミスト誌は先週久しぶりに邦銀のことを書いていた。日本のことを書くなら年金問題だと思うのだが、海外メディアには年金の話は馬鹿馬鹿しくて書く気にならないのかもしれない。
さて邦銀の話だが趣旨は以下のとおりだ。
- 6大銀行の不良債権比率はこの3月期には1.5%に下落していた。(銀行危機の2002年には8%)
- もっとも地銀の平均不良債権比率は4%で、信用組合のそれは7%以上だ。
- 6大銀行にとって問題は不良債権はもはや問題ではなく、問題はいかに利益を上げるかになってきた。
- S&Pによると6大銀行の前期の純利益は1割近く減少し2.82兆円になった。これはその前々期が貸倒引当金の戻し入れにより史上最高の利益を計上していたからだが、この幸せな傾向は終わりに近い。
- 日銀はゆっくりと金利を引き上げ始め現在の短期金利は0.5%、来春には1%に引き上げられると予想される。金利引き上げは商業銀行にとって恩恵であると考えられる。何故なら預金金利は貸出金利より引き上げが遅い傾向があるからだ。
- 実際昨年半ばから貸出金利は1.3%から1.6%へとじりじりと上昇している。それでも日本の貸出スプレッドは3%以上取る米国の3分の1に過ぎない。貸出の伸びは微々たるもので、長期的に見て金を生み出すものではない。
ここでエコノミスト誌は個人取引に言及し、消費者金融会社を傘下に持つ銀行、特に新生銀行の収益が悪化したことに言及している。また投信販売について三菱UFJの業務改善命令にも触れる。
そして結論として「最も野心的な将来の利益は国内外の投資銀行業務にある」と喝破している。そしてみずほグループがリードを切っているという。みずほコーポレートの斉藤頭取は貸出は将来の大きな収益に結びつかないので、みずほは証券化・リスク管理・自己勘定取引・デリバティブの分野でアメリカの投資銀行に追いつかなければならないと言っている。
日本政府もみずほの仲間達を助成するのに熱心と見受けられる。金融庁は銀行・証券間のファイヤーウオールの見直しをすると最近発表した。
エコノミスト誌は最後に「しかし道は遠い。何故なら邦銀の連中が言っているが、不良債権処理に苦しんでいたので過去数年間の金融面の革新的な変化の間、寝過していたのだ」と言う。
株式市場でも中々邦銀大手の株価が上昇してこない。先週三菱UFJから「株式分割をして最低売買代金を下げることが株主総会で承認された」という連絡があったが、これを機会にもっと個人投資家を惹きつけて欲しいものだ。