金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

分けてもらいたい外資の儲け

2007年07月04日 | 金融

ファイナンシャルタイムズ(FT)によると、昨年日本に進出している外国の投資銀行は株式市場が低迷したにも関わらず史上最高の収入を上げた。

記事の概要は次のとおりだ。

  • モルガンスタンレーは21%増収の2,386億円、これに続くゴールドマンは4%増収の2,313億円の増収だ。メリル、ドイチェ、UBSも史上最高の収益を上げている。これは日系証券会社が、株式取引高の低迷と個人客の委託手数料低下に苦戦したことと対照的だ。
  • それは投資銀行が機関投資家にフォーカスしたからである。また投資銀行は証券化やM&Aなど新しいビジネスで収益を上げた。モルガンスタンレーは地銀とタイアップしてサブプライムローンの証券化を図っている。
  • 大手投資銀行は日本市場は今後拡大を続けると期待して、オペレーションを強化している。UBSは東京の人員を今年2割増加させ、モルガンスタンレー、ドイチェは14%の増員、ゴールドマンは10%の増員予定だ。

記事の内容はざっとこんなところだが、これらのことが示唆するところを考えてみよう。

まず「優秀な人材の外資シフト」だ。投資銀行業務が邦銀にとっても期待できる収益源であることはみずほコーポの斉藤頭取等投資銀行業務を目指す邦銀トップも認めるところだ。しかし優秀な人材を外資に奪われては、ビジネスチャンスを追求できない。いかに報酬を高めるかが課題だ。

又今日の日経新聞などはシティバンクが、日興證券を銀行代理店にしてプロダクツを販売すると報じている。外資と邦銀・日系証券のガチンコ勝負になりそうだ。この勝負を決めるのは尽きるところ人材なのだ。優秀な人材の確保と活用で勝負が決まる。

次に「M&Aが加速」する。M&Aは証券会社が持ちかけるから進むものではなく、企業側にニーズがあるから起きるのだが、「金利の上昇」「団塊の世代の退職」「国内消費市場の縮小」などは総てM&Aの促進要因になる。投資銀行はたくみにこの潮流に乗っている訳だ。投資銀行は中規模サイズのディールも拾っている。中規模がどれ位かということだが、外資の知人に聞いたところではディールサイズで200億円という答が返ってきた。

M&Aが中堅企業まで進んでくると、日本の企業行動が売り上げ重視から利益重視に変わっていくだろう。

次に「東京の大手町・日本橋辺りの家賃が上昇」する。既にこの地域の家賃は上昇しているが、外資の人員増計画が家賃上昇を加速することは間違いない。家賃の上昇は地価の上昇を意味し、東京と地方の地価動向の違いが一層鮮明になるだろう。

以上のことは金融機関の従業者間の所得格差や地域間の所得格差の拡大を意味する。ことの良し悪しは別として、投資銀行の躍進は金融界を越えて大きなインパクトを持つ。

コメント
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