今日(7月11日)のドル円為替は1円70銭程円高になり121円台に入っている。これは米国でS&Pがサブプライムローンの格付を引き下げたことで、経済の先行き見通しに悪い観測が広がったためだ。これが直ちに円相場の転換点になるとは思わないが、信用リスクの顕在化が円高につながる点は注視しておいて良いだろう。
そんなことを考えていると、ファイナンシャルタイムズ(FT)にクレディスイスの資産運用部門の副会長パーカー氏が記事を寄せていた。氏の論点は次のとおりだ。
- 6月までの1年間で円はドルに対して5.2%低下している。対ドルでユーロが7.5%、ポンドが9%上昇しているのと対照的だ。円はアジア通貨の中でも下落してる。対韓国ウオンで8%、対人民元で10%の下落だ。
- 購買力平価から見て円が過小評価されていることは明らかだが、歴史的に見て購買力平価をベースにして為替ポジションを取ると損失を生むことが多い。
- 問題はどのような要素が円安の原因となっている円キャリートレードの巻き戻しを起こすかだ。多くの市場参加者は円金利の正常化が円高への転換点になるという。
- しかし日銀が2008年の終わり頃か2009年まで2%を越えて金利を引き上げることはないいう予想は合理的である。従って内外金利差が予測可能な将来まで続く可能性が高い。
- 注目しておくべきことは、日本の個人投資家の動きとグローバル市場における流動性である。どこかの時点で日本の個人投資家はグローバル投資を利食いして、国内市場にスイッチするだろう。日本の企業収益が拡大して日本株のバリュエーションが他国に比べて割安になることがきっかけになるだろう。当面はその状況にないが、2008年始めが転換点になる可能性がある。
パーカー氏もいつ円キャリートレードが巻き戻されるか予測することは困難という~そんなことが分かれば大儲けができるが~。
私の円相場に対する見通しは、
- 原油・レアメタル・穀物等の価格高騰が日本の物価上昇をにつながり、意外に早いペースで金利が引き上げられる可能性がある。
- 2008年夏の北京オリンピック終了後、中国で色々な問題が噴出し中国経済の一時的停滞が明らかになり、中国株式市場に大きなコレクションが起こる。
- これが契機になり、日本の個人投資家が新興市場から資金を引き上げ国内に回帰する。
というようなことを考えると1年後位には為替相場の方向は変わっている可能性が高い。もし市場参加者が同じことを考えると、先を見越してキャリートレードの巻き戻しを図るから転換点の数ヶ月前からドル円為替の潮目に変化が出るかもしれない。