前のブログで米国(おそらくそれ以外の外国でも)は、未入籍のペアのことをDomestic partnerと呼んでいるということを書いた。米国の場合、未入籍のペアは結婚していない男女のみならず、Civil Union(法的に承認された同性同士のカップル)を結んでいない同性パートーナーもDomestic partnerに入る。
日本ではDomestic partnerという言葉はまだ一般的ではないと思うが、中高年の間で一緒に暮らすけれど入籍はしない、というパートナーが増えつつあるのではないか?ということは新聞の人生相談などからうかがえる。
なぜ入籍しないか?というと入籍してしまうと相続の問題が発生するからである。この前日本相続学会のセミナーで松原ゆかりさん(有限会社ビクトリー)の信託活用事例の話を聞いたが、その中で入籍しない二人が老後の暮らしを守りながら、婚姻すれば起きうる複雑な相続問題を解決する手段の一つとして信託があることを勉強したので紹介してみたい。
事例は次のとおりだ。
配偶者と死別した資産家の男女Aさん・Bさんが余生を共に過ごすことを決めたが、将来おこる相続の問題を考えると入籍は断念。しかし二人は一緒に暮らす新居を半分づつ資金を出して共同で購入した。AさんかBさんのどちらかが先に亡くなっても、残された方がその家に住みたい。そして残されたパートナーが施設に入居または死亡した場合は、自宅を売却して、相続人である四人の子ども(AさんBさんには二人づつがいる)に均等に分けて貰いたい、と二人は考えた。
その解決策が信託契約である、と松原さんは説明された。
つまりAさんBさんを委託者兼受益者とし、AさんBさんの子どもの中から一人づつ選び受託者とする。4人のお子さんは残余財産帰属者に定めておく。
こうすればAさんまたはBさんのどちらかが先に亡くなっても、残されたパートナーは受益者として自宅に住み続けられた、残されたパートナーが施設に入居または死亡したとき、信託財産は売却され、相続人に配分(信託は終了)されるというものだ。
これはかなりシンプルな例だが、価値観や結婚以外のペアリングのあり方などの多様化に従来の法律がついていけないケースが出ている。これに対応するには民事信託の利用が良いということであった。