金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

未入籍のペアと民事信託の活用

2013年10月29日 | 社会・経済

前のブログで米国(おそらくそれ以外の外国でも)は、未入籍のペアのことをDomestic partnerと呼んでいるということを書いた。米国の場合、未入籍のペアは結婚していない男女のみならず、Civil Union(法的に承認された同性同士のカップル)を結んでいない同性パートーナーもDomestic partnerに入る。

日本ではDomestic partnerという言葉はまだ一般的ではないと思うが、中高年の間で一緒に暮らすけれど入籍はしない、というパートナーが増えつつあるのではないか?ということは新聞の人生相談などからうかがえる。

なぜ入籍しないか?というと入籍してしまうと相続の問題が発生するからである。この前日本相続学会のセミナーで松原ゆかりさん(有限会社ビクトリー)の信託活用事例の話を聞いたが、その中で入籍しない二人が老後の暮らしを守りながら、婚姻すれば起きうる複雑な相続問題を解決する手段の一つとして信託があることを勉強したので紹介してみたい。

事例は次のとおりだ。

配偶者と死別した資産家の男女Aさん・Bさんが余生を共に過ごすことを決めたが、将来おこる相続の問題を考えると入籍は断念。しかし二人は一緒に暮らす新居を半分づつ資金を出して共同で購入した。AさんかBさんのどちらかが先に亡くなっても、残された方がその家に住みたい。そして残されたパートナーが施設に入居または死亡した場合は、自宅を売却して、相続人である四人の子ども(AさんBさんには二人づつがいる)に均等に分けて貰いたい、と二人は考えた。

その解決策が信託契約である、と松原さんは説明された。

つまりAさんBさんを委託者兼受益者とし、AさんBさんの子どもの中から一人づつ選び受託者とする。4人のお子さんは残余財産帰属者に定めておく。

こうすればAさんまたはBさんのどちらかが先に亡くなっても、残されたパートナーは受益者として自宅に住み続けられた、残されたパートナーが施設に入居または死亡したとき、信託財産は売却され、相続人に配分(信託は終了)されるというものだ。

これはかなりシンプルな例だが、価値観や結婚以外のペアリングのあり方などの多様化に従来の法律がついていけないケースが出ている。これに対応するには民事信託の利用が良いということであった。

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結婚すれば消費が増える。とりあえず米国の話だが。

2013年10月29日 | 社会・経済

日本には「一人口は食えぬが二人口は食える」という諺がある。二人で暮らす方が、家賃等の一人あたり経費が下がるので、暮らしやすくなるという意味だ。

その延長線で考えると二人で暮らすと家計にゆとりがでるので、消費が、正確には裁量的な消費が増えるだろうということになる。

米国の調査機関ギャラップが行った調査はこのことを顕著に示している。

今年1月から9月にかけて13万人以上のアメリカ人にインタビュー調査を行った結果は、アメリカ人の1日当たり裁量消費(電気代等の必要支出や自動車等の大型耐久消費財支出を除いた消費)は、結婚している人が102ドル、同棲している人が98ドル、離婚した人が74ドル、独身で結婚経験がない人が67ドル、未亡人が62ドルだった。

ギャラップはこの調査結果から、結婚経験のない独身者が結婚すれはアメリカの消費は増えるし、同じ文脈でいえば結婚経験のない独身者がへって同棲者が増えると消費は増えるだろうと述べていた。

ここで同棲者と書いたのはdomestic partnershipの訳。Domestic partnershipは「結婚」も「同性婚」civil unionもしていないが、生活基盤を共有する関係と説明されている。

このあたりは社会習慣や法制度が違うので、簡単な比較はできないが、二人口が食えるということはアメリカでも間違いのないところだろう。

ただし卵が先か鶏が先か的なところもありそうだ。ギャラップ調査によると結婚している人の平均収入はしていない人より高い。つまり収入が高いから裁量消費が増えるということがいえる。

これは調査には書いていないが、収入が高いから結婚できるのか?結婚して生活が安定、または新たな目標ができるので、収入の高い仕事を得ようとするのか?ことも今後の研究課題だろう。

消費を増やしGDPを拡大するために結婚を奨励するというのは、本末転倒な感じがするが、ガンジガラメの法律的な結婚にこだわるより、少し緩やかなdomestic partnershipが受け入れやすい体制を作ることは日本でも検討するべき課題なのだろう。

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