金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

イーチ・ウエイ・ベットとは

2007年10月20日 | うんちく・小ネタ

イーチ・ウエイ・ベットの仕組みについて簡単に説明しておきたい。イーチ・ウエイ・ベットとは競馬等の掛け金の仕組みで一等をはずして2,3等を当ててもそこそこの賞金が貰える仕組みである。私は競馬の類はやらないが、何故こんなことを書くかというと最近コモディティ(石油等商品)を論じたエコノミスト誌の中にイーチ・ウエイ・ベットの話が出てきて少し調べる機会があったからだ。どこかで転用するかもしれないので調べたことを自分のライブラリー=ブログに残しておきたいと思った。それで恐らくほとんどの読者にとって関心のない話題だろうが、その様な理由でエントリーしておくものだ。

なお今の世の中は便利なもので調べる気になると、英語のサイトではあるが、手頃なサイトがありそこの説明を大いに参考にさせていただいた。

さてイーチ・ウエイ・ベット Each way betは二つの賭けで構成されている。一つは「優勝者」をかけるもので、ウイン・ベットWin betと言い、もう一つは「優勝者」を当てることを外しても、2,3位などの入賞者を当てた場合何割かの優勝賞金の何割かの賞金を出すプレイス・ベットPlace betである。Placeには「入賞」という意味がある。

英国の競馬で具体例を説明するとイーチ・ウエイ・ベットの条件は次のように表示される。

掛け率Odds 25-1

イーチ・ウエイ・ベットの条件  入賞賞金/優勝賞金 1/5  入賞=1,2,3

馬券屋Bookmakerはあなたの掛け金口座から100ポンドを掛け金としてとる。内訳はWin bet50ポンド、Place bet50ポンドだ。

さてあなたが賭けた馬が1,2,3着に入らなかった場合はどうなるか?

あなたは掛け金100ポンドを失う。それでおしまい。

あなたが賭けた馬が2着または3着に入った場合はどうなるか?

まず2着、3着の差はなく「入賞」となるということだ。しかし1着を争うWin betにあなたは負けたのでその掛け金50ドルを失う。一方「入賞」は当てたのでその配当がある。

配当は「掛け金50ポンド」×「掛け率25倍」×「入賞賞金比率1/5」=250ポンドだ

これにPlace betの掛け金の戻りがあるので、合計300ポンドが戻る。しかしWin betの掛け金50ポンドを失っているので、純利益は200ポンドとなる。

あなたの賭けた馬が優勝した場合はどうか?

Win bet分は50ポンド×25=1250ポンドだ。これに加えて掛け金の50ポンドが戻ってくる。更に「入賞」(一位は入賞でもある)分の賞金がある。これはPlace Betとして上で計算した250ポンドだ。これに加えて掛け金の50ポンドが戻ってくる。従って純利益は1500ポンドになる。

このような賭けの方法が日本で行われているのかどうか賭け事に疎い私はしらないが、検索エンジンで「イーチ・ウエイ・ベット」で調べても役に立つ答はなかったので、有名でないかもしれない。もしそうだとすると色々な賭けの方法を生み出した英国人というのは中々なものである。そしてその賭けの思考が経済活動にまで及んでいるとすると遊びごとも捨てたものではないというべきだろう。

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コモディティの世界

2007年10月20日 | 金融

最近先物業者のセールスマンから「とうもろこしの先物をやりませんか?」という類の電話がかかってくる。以前であれば「結構です」の一言で電話を切ったが、こうコモディティ(商品)の値段が上がってくると「話位は聞こうか?」なんて気が起きるものだ。もっとも今先物業者を使って商品先物投資を行うつもりはない。そのノウハウも時間的余裕もない。しかしグローバルな資金の流れを見る上でコモディティの世界を覗いておく必要はあると考えている。エコノミスト誌もこのような観点から最近の状況を記事にしている。ポイントは次のとおりだ。 

原油価格が今週89ドルの達したが、この状況をトルコ軍のイラン北部への侵略など政治地政学的に説明しようとする誘惑に駆られる。また同じ要因で金が27年振りの高値を付けていると信じている人もいる。しかしコモディティ市場は単に中東の出来事だけではなく多くの要因の影響を受けている。銅、鉛、大豆、小麦、綿、コーヒーなどが、今年二桁のパーセントで上昇している。

穀物価格の上昇は原油価格の上昇と関連付けられる。つまり原油価格が上昇するとガソリンの代替燃料であるエタノールの需要が増え、エタノールの原料であるとうもろこしの価格が上がる。とうもろこしの需要が高まると作付面積が増えるので、小麦などの生産量が減少し、価格が上昇するというメカニズムだ。

しかしコモディティ価格のより広範な強さはヘッジファンドやプライベートエクイティが「代替資産」として魅力を感じていることを反映しているものだろう。2000年代初期のドットコム・バブルの崩壊以降、投資家は株や国債を離れて資産を分散することに熱心になっている。

この動きを加速したのが、一連のコモディティETF(上場型投信 Exchange- traded funds)だ。ちょっと調べたところ、日本では楽天証券が今年の夏からBarclays Global Investors (BGI)が運用するコモディティETFの取り扱いを開始している。最近の例ではBGIは木材価格をベースにしたETFを開始した。

このように投資家がコモディティ市場に資金を投入してきたので、商品市況が活発化し値段が上昇している面を見ておく必要がある。今年の夏の信用収縮でハイ・イールド債券やストラクチャード物に入っていた資金が金などのコモディティにシフトしている。また米ドルの下落を金でヘッジする向きもある。UBSの金属ストラティジストのバー氏は投資家はコモディティ投資に「イーチ・ウエイ・ベット」を行っているという。

( イーチ・ウエイ・ベットというのは競馬等の賭けの仕組みで一位を当てなくても、入賞者をあてるとある程度の配当がもらえる仕組みだ。これについては別途ブログに書いたので興味のある方はお読みください。)

つまり経済成長が堅調で商品の供給がタイトな場合でもまたは1970年代のようにスタグフレーションに陥った場合でもコモディティ投資は良いパフォーマンスを得られるという賭けだ。もちろんこの賭けが外れる場合もある。それはインフレを伴わない景気後退が起きる場合である。しかし投資家は世界経済は米国の住宅市場の問題を克服することができると考えていると見受けられる。

メリルリンチのアナリストによるとオイルの供給はタイトな状況が続き、1バレル当り100ドルの声を聞くことも遠くないということだ。

ところで我々個人がコモディティに投資をする場合、幾つかの方法がある。一つは先物業者を使って先物取引をする方法。次はコモディティ投信を買う方法。次はコモディティETFを買う方法。次はコモディティに相関関係の高い株や投信を買う方法である。コモディティ投信は野村アセット他幾つかの日系投信会社で組成しているが、パフォーマンスは一見する限り、それ程高くない様だ。目先のパフォーマンスを見るとコモディティ相場と相関関係の高い会社の株を買う投信の方が高い様に見受けられえる。私はドイチェアセットが運用するライジング・トゥモローという投信に投資しているが、これは「水資源」「農業」「代替エネルギー」に投資するファンドでそこそこのパフォーマンスを上げている。私はこれがベストの方法などという積もりはない。ただコモディティにベットするにしても、投資手段は様々であるということを述べたいということだ。

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王者の宿命か、王者への風当たりか?

2007年10月19日 | 社会・経済

私はかなり長い間にわたってトヨタ車に乗っていた。理由の一つは故障が少ないということである。実際アメリカで乗っていたクレシーダ(日本ではマークⅡ)を除いては故障らしい故障はなかった。面白くもないが、故障はないというのはトヨタの神話ではなく、事実だと私は思っていたが、実は必ずしもそうではないらしい。

今週水曜日にトヨタが47万台以上の車のリコールをかけたという報道があった。リコールをかけられたのは99年から2004年の間に日本で作られたクラウンを含む幾つかの車種で、問題は燃料ポンプ、燃料コントロール、ハンドルにあるということだ。FTによるとトヨタの今年のリコールは五回目でリコールをかけた台数は594千台以上だ。このニュースは先週米国の消費者に大きな影響を持つConsumer Reportsという雑誌が、新しいトヨタ車を推薦するといういつもの習慣をひっくり返したことに続く痛手だ。

Consumer Reportsによると信頼性においてトヨタはホンダ、スバルについて3番目であり、トヨタの二つの新しいモデルは予想される信頼性において平均以下と評価されている。

日本と米国におけるトヨタのリコール台数は118万台以上になる。昨年トヨタは米国と日本で210万台のリコールを出し、日本政府から欠陥車の台数を減らす様命令を受けていた。これに先立って2005年にトヨタは米国で229万台、日本で188万台のリコールを行い、渡辺社長直轄の下、品質改善の緊急タスクフォースを立ち上げていた。それ以降リコール台数は低下傾向を示しており、トヨタは大部分の問題に対処したと述べてきた。

しかしクレディスイスの自動車アナリスト遠藤氏は「トヨタは100%問題を解決したとは見えない」「しかし私はトヨタの品質が低下しているとは思わない」「Consumer Reports誌が評価しているトップ20-30の車の半分はトヨタ車である」と述べている。

以上のようにトヨタ車に対する評価を見てみると、米国の消費者向け雑誌の評価はやや辛いかもしれない。業界の王者になろうとするものに対する風当たりかもしれない。あるいはトヨタといえども生産台数が増え、製造ラインや従業員の数が増えると品質の維持は困難になるということだろうか? これはある意味では王者の宿命かもしれない。大きいことは必ずしも良いこととは限らないのだろうか?特にユーザーにとっては。

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日本の401Kを見直すべし

2007年10月18日 | 金融

今日会社で「個人型の確定拠出年金に加入してはどうか?」という話題が出ていた。私の今いる会社は企業年金を実施していないので、個人型確定拠出年金(401K)に個人で加入しようと思うと加入できない訳ではない。しかし私の意見は「おやめになったら?」である。401Kのメリットは掛け金の所得控除と運用段階の非課税だが、デメリットである管理コストが高すぎる。受託機関でばらつきはあるが大体年間4,5千円だろう。一方拠出限度は月18,000円年間で21.6万円だ。これに対する手数料の割合は2%を越える。低金利・株式低迷の日本で2%を超える運用を行うことは楽ではない。ということは401Kのメリットは運用財産がつみあがらないと出ないということだ。

そんな話をしている時FTが日本の401Kを論じていた。

FTによると野村アセットの柴田社長は同紙に「日本の確定拠出年金制度は拠出限度が低いので役に立たない」と述べた。又同氏は「日本の資本市場を強化し、富の創造を刺激する上で年金制度改革がきわめて重要だ」「もし年金改革が成功すると日本の資産の上に課せられた不必要な制限が取り払われ、貯蓄は資本市場に流れ出し、消費を伸ばす富の創造が行われるだろう」と言う。

柴田氏のコメントは1,500兆円の金融資産の半分を預貯金に回している日本の保守的な貯蓄者をより利回りの高い商品に向かわせるためには、日本政府はより力強いアクションを取る必要があるという見方が広がっていることを反映している。

日本の401Kプランは拠出は会社が行うが受益者(従業員)が自己の判断で資産配分を行う。しかし拠出限度が低いため401Kプランが本来思うほどに伸びないと柴田氏は言う。(なお正確に言うと日本の確定拠出年金でも、個人型と呼ばれる受益者が拠出する制度もある。この制度には自営業者や企業年金未実施の会社の従業員が加入することが可能だ)

日本の確定拠出年金の拠出限度は他の年金制度の有無等により異なるが216,000円から816,000円の範囲である。一方米国の拠出限度は45千ドル(約530万円)だ。この結果日本の確定拠出年金加入者は240万人で資産規模は35千億円となっている。因みに米国の確定拠出年金制度加入者は43百万人で資産総額は350兆円だ。

個人資産を貯蓄から投資にシフトすることは、将来の年金受給者をサポートする上で重要なだけではなく、日本の金融セクターの競争力を高めるためでも重要である。

柴田氏は「投資銀行の国際本部はロンドンにあり、地域本部は香港かシンガポールにある。東京はアジア地域の本部にすらなれない」という。

日本をアジアの金融センターにするため401Kを改革するのは本末転倒のような気がするが、高齢化する日本で高齢者の尊厳を守るためには、十分な年金が必要である。そのためにはせめて管理コストを十分まかなえる位に拠出限度を拡大するべきであろう。

日本人はアメリカの制度を真似する時形だけを真似して中身をまねしないことが多い。大切なものは401Kという器があるかどうかではなく、その器で高齢者が十分飯が食えるかどうかなのである。税収と掛け金を天秤にかけて、年金の充実を図らないような政策は基本的に間違っているのである。

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不透明感が残る郵貯のカード選び

2007年10月18日 | 社会・経済

今月発足したゆうちょ銀行が独自のクレジットカードを発行し、従来の提携カードを廃止する可能性が高いのでクレディセゾン等カード会社が提携カードの発行を相次ぎ停止している。私は郵貯に口座を持っていないので、影響はないがワイフは郵貯とクレディセゾンのクレジットカードを使っているので影響がでるようだ。

ところでクレディセゾンの肩を持つ訳ではないが、同社は1993年から提携カードを発行してそのシェアは全体の4割を占める。ところが新聞情報によるとゆうちょ銀行はクレジットカードの自社発行のノウハウがないため、三井住友カードとJCBの二社と提携するということだ。三井住友カードが採用されることについては日本郵政の社長が三井住友出身の西川氏であることを考えるとカード会社の選定に情実がないのか疑問を感じるとこころだ。例え西川社長にそのような意向がなくても、部下は必要以上に社長の気持ちを忖度するところがあるものだ。少なくともこのような疑問が提携を廃止されるカード各社のみならず、我々一般人の間にも起こることに対して、ゆうちょ銀行はカード会社選定のプロセスの透明性を高める必要があるだろう。またマスコミはこのような問題についてもっと厳しい目を向けるべきだろう。

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