金融そして時々山

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米国の強制歳出削減発動の影響は?

2013年03月01日 | 投資

昨日史上最高値まで16ドル弱まで迫ったダウ平均だが終値は20.88ドル(0.15)のマイナスとなった。引けにかけて株価が下落した理由の一つは3月1日から発効する予定の強制歳出削減代替案に関する民主・共和両党の動議が上院で否決されたことだった。

2011年に強制歳出削減Sequestration(一般的には差し押さえという意味)法は当時国民の目をまやかすトリックという見方もあったが、今日から本当に発足することになった。これにより2021年までに合計1.2兆ドルの政府支出削減が行われることになる。2013年(財政年度)での削減額は約850億ドルで約半分は国防費関連だと言われている。カットされる国防費を円換算すると約4兆円だ。これは日本の防衛予算の8割に相当する数字だ。

この強制歳出削減を米国民がどのように考えているのか?というのが今日の関心事だ。

ギャラップの調査によると、強制歳出削減で米国経済が悪くなると考えている人は56%、悪くならないと考えている人が45%、回答なしが13%だった。また自分自身の財務状況への影響については44%が悪くなると考えたが悪くならないと考えた人が45%でわずかに上回った(回答保留は11%)

支持政党別では民主党支持者の51%が米国経済は悪くなると考えたのに対し共和党支持者は64%が悪くなると考えた。

ただし経済全体が悪くなると考えるにも関わらず共和党支持者の40%が強制歳出削減が行われることを容認すると考えた。これは民主党支持者の容認率34%を上回っている。

ギャラップは共和党支持者の一見矛盾する反応について、一つの説明は「短期的には経済は悪化するが長期的にはメリットがあると考えている」のであろうと述べていた。

国防費のカットは長期的には米国の力の外交におけるプレゼンスを低下させる。短期的には軍需産業の生産量が下がるのでGDPが悪化し、軍需産業の雇用も悪化する。しかし一般的な国民生活への影響は大きくない、とも考えられる。

世論が分かれているだけに暫くの間は強制財政削減による予算が実施され、市場はその影響度合を計算する、ということだろうか?

コメント
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