金融そして時々山

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ピュー、日米国民感情の改善を記事に

2013年03月21日 | 国際・政治

日本ではTPP参加に関する議論が高まっている。一方最大の貿易相手国である米国では相変わらずTPPに関する関心は一般的にはあまり高くない。たとえばニューヨーク・タイムズの検索欄に、TPPまたはTrans-Pacific Partnershipと入力して検索しても、米国内のニュースを見ることは殆どない。もっとも試してはいないが、自動車産業の拠点に近い中部をベースとするシカゴ・トリビューンならもう少し関係記事がでているかもしれないが。

しかしニュースがない訳ではない。FTを検索すると次のような記事がでていた。・・・今米国はTPPと並んでEUとの間で大西洋自由貿易協定を締結しようと頑張っている。米国通商代表部のマランティス代表代行はカンサス州選出の共和党議員の質問に対して「我々は輸出で成功している米国の農業の利益を守るため、日本や欧州の農産物輸出を抑制するような提案に対して反撃する」と述べていた。

米国の通商代表部というと本日の日経新聞朝刊「私の履歴書」で元代表のカーラ・ヒルズ女史が日本記者クラブで自由貿易の大切さを力説したと書いていた。「履歴書」によると1989年10月の話だ。この年は三菱地所がロックフェラセンターを買収するなど、日本の経済活動のプレゼンスが高まり、米国で反発が高まっていた時期だ。

3月20日付のピューリサーチのレポートWhat Japanese and American Think about Each Otherによると、1989年には63%のアメリカ人が日本は不公平な貿易慣行を行なっていないと考えておらず、半数を超える人が日本からの輸入品の関税を引き上げるべきだと考えていた。また1995年にクリントン大統領が日本からの高級車輸入に関して課税を強化する決定を行ったことについて61%の国民が賛成していた。

しかしピューリサーチは、このような米国民の日本に対する感情は今では劇的に変化していると述べる。2010年の調査では、6割のアメリカ人が日本との貿易を増やすべきだと考えている(ちなみにEUと貿易拡大には58%、中国との貿易拡大は45%が希望)。

ではどうして日本に対する感情が好転したのか?ピューリサーチは「恐らく一つの理由は中国が日本に取って代わって米国の貿易上の競争相手となったからだろう。1990年に日本は米国の貿易赤字の40.7%を担っていたが、2012年には10.5%に低下して中国が43.3%になっている」と述べている。

またピューは読売新聞の世論調査を引用して「1993年には日本人の37%だけが日米関係は良好と考えていたが、2002年には75%近い日本人が好印象を持っていた」と述べている。

自由貿易協定を含めて外交交渉は国内の反対勢力をいかに納得させるかというところが大きい。TPP参加交渉が具体化していくと、日本のコメや自動車業界の閉鎖性(とアメリカは主張)などがテーブルに上がり、刺々しくなる局面が予想される。しかし基本的に相手に対する印象が改善していることは、話のまとまる可能性を力強く示唆していると私は考えている。

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