昨日ライキ銀行の解体と大口預金者の預金没収により一時的に解決したと思われたキプロス危機。日本株などアジアの株は上昇したが、欧米のセッションに入って下落した。メディアが伝えるところでは、ユーロ財務相会議の議長を務めたオランダのダイセルブルーム蔵相の「キプロスの銀行再編はユーロにおける前例となるべき」という主旨の発言に反応して売られたということだ。
今回のキプロス危機で少なくとも二つの信頼が失われた、と私は考えている。
一つは今回は回避されたけれど、預金保険でカバーされる少額預金ですら、Bail in(預金者課税、事実上の預金カット)される可能性があると預金者が考え始め、銀行預金に対する信頼が揺らぎ始めた。
キプロス政府は今週の木曜日まで銀行閉鎖の続行を決定。ATMからの引き出しは1日100ユーロまでと制限されている。このような状況では企業特にに日々の資金繰りに余裕のないところは集金もままならず不安感を募らせているだろう。
個人預金者だって銀行が再開すれば再びの凍結を恐れて預金の引き出しに押し寄せることが想像される。このような騒ぎを防ぐにはキャピタルコントロール(資本移動規制)を課す必要があるだろう。だがニューヨーク・タイムズによると地元銀行はキャピタルコントロールに対して全くの準備不足だ。またどのようなキャピタルコントロールが課せられるかも不明だ。
キプロスでは金融システムに対する信頼の根幹をなす「流動性」というか、銀行に預けている自分の金を自由に使えないという金融のもっとも基本機能に対する信頼が失われつつある。
もう一つはユーロ圏の中の北と南の信頼関係だ。ドイツやオランダなどが、債務危機に苦しむ南の諸国に対して、金融機関救済は北の諸国の税金による救済ではなく、自国の預金者の預金を一部なりともカットして救済するべきだと主張し始めた時、南北の信頼基盤はゆるぎ始めた。
短期的にはユーロ離脱の危機が遠のいたといわれるキプロス。だがキプロス救済ドラマの第一幕は二つの信頼の喪失で幕を閉じ、第二幕の幕開けを待っている・・・・