最初に目にしたのは「生き抜けろ!」という命令形でした。半月ほど前だったかな。
「生き抜けろ」――どうにも、座りの悪い言葉だと感じたのですが、この頃では、それほどにも思わなくなってしまいました。慣れてしまったのか。それとも、言葉への感度が鈍ったのか。
終止形は「生き抜ける」。
この意味なら、私は「生き抜く」というべきだと思ったのです。命令形なら「生き抜け!」。
「生き抜ける」だと「生き抜けられる(生き抜くことができる)」のら抜き言葉のように感じられます。
でも、ネットであちこち見てみると、かなり普通に「生き抜ける」といわれているみたい。たとえばこんな感じ。
「駆け抜ける」というような言葉に影響を受けて、「生き抜く」が「生き抜ける」になったのでしょうか。もっとも、逆に、「駆け抜く」とはいいませんが。
「勝ち抜く」を「勝ち抜ける」ということもあるみたいです(→こんな具合に)。
「抜く」は文語的に感じられるのでしょうかねぇ。それで「抜ける」とした方が馴染みやすいのかも。
日本語は変わってゆきます。
今日の談志師匠のCDタイムは「お化け長屋」。
なんとこのCDセットで3度目の登場です。家元はこの噺が好きだったのでしょうか。
長屋を借りに来るのが、幽霊怖い人と、怖くない人なんですが、2人の対比は今日の高座がいちばんはっきりしています。受け取る人の態度によって、怪談話をする杢兵衛さんの調子が変わって聞こえるのが、面白い。幽霊への恐怖が相対化されるんですね。幽霊はいる、とマクラで言う師匠ですが、でも、怖がっててもしょうがない、というのが本音だったのかもしれません。