長田弘さんが今月3日に亡くなられたことを知りました。享年75。
大学生の頃、詩人の文章を読むのが好きで、あれこれ目を通していました。
長田さんの『ねこに未来はない』(晶文社)は、だから、出版されてすぐに読んだはず。
とても気に入りました。特に、比喩の使い方に感心して、どうすればこの人のような比喩を考え出すことができるのかと、憧れた記憶があります。
今、当の本は手元になくて(たぶん、田舎の家の押入れの中)確認することができず、代わりに『現代詩の戦後 定本 抒情の変革』(晶文社、1974)などという評論集を引っ張り出してしまいました。
内容はずいぶん難しい。
- ……今日においては、表現についてかんがえることは全世界について考えることを意味しなければならない。
あるいは、
- ……詩をひとつの自意識の手段としてではなく、存在喩としてではなく、全的生そのものとして創造してゆくことこそ大切なのだ。
時代への批評的精神に裏打ちされた、長田さんの詩論は生ぬるい日本の抒情を排し、一種の闘争精神を抱え込んでいるように思えました。
それだけにかえって、『ねこに未来はない』の、日常を詩的に捉え、楽しい言葉で表現する姿勢に、驚き、かつ喜んだものでした。日本語の表現を考える上で、個人的には、忘れられない1冊です。
ご冥福をお祈りします。