金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

【書評】電子書籍の衝撃:お値打ちな本です

2010年05月03日 | 本と雑誌

新書本サイズで1100円の本というのは少し高い。本のサイズまで気にせず、アマゾンで頼んだところすぐ来たこの本「電子書籍の衝撃」(佐々木 俊尚著 ディスカヴァー・トゥエンタィワン発行)は、お値打ちな本だと思う。お値打ちな本とは何か?私の勝ってな定義を述べると「買って得したなぁ」と思う本であり「暫く手元に置いておこう」と思う本である。旬の話題を取り上げた本の中には一読してハイさようならという本も多いが、この本は暫く手元に置いて読み直すことを期待する本だ。

「電子書籍の衝撃」はアマゾンのキンドルやアップルのiPadが書籍業界にどのような影響を与えるか論じた本だ。このようなはやりの本は何冊か読んだ。だが一冊選ぶならば僕はこの「電子書籍の衝撃」を推薦したい。何故かというと著者の出版や小売業全般に関する深い洞察や見識が丁寧な取材の背後にあり、読むものを納得させる。

著者は音楽の世界でiPodが席巻したした経緯に詳しく、そのことをベースの電子書籍の将来を予測する。その中で既存出版社はズタズタに切られて多少の溜飲を下げる人もいるだろう。

だが僕が評価したいのは本の世界に幾つかの新しい切り口を持ち込んだ点だ。例えば「ケータイ小説は、コンテンツでなくて、コンテキスト」という一節がある。コンテキスト(文脈)というのはちょっとなじみのない概念なんだけれど「同じ空間を共有する感覚」というと分かりやすいかも知れない。これからの消費の世界でコンテキストが重要なのは本に限ったことではないだろう。

「電子書籍の衝撃」は本が電子端末を通じて読まれるという現象面の考察だけではなく、その背景にある出版文化や経済的な枠組みを的確に伝えている点で中々の本だと思う。一読してハイさよならでない何かがある本だと僕は思っている。

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六本爪と十二本爪、山に熱い男たちの話

2010年05月03日 | 

これは山登りの話である。しかも雪山の話。六本爪とか十二本爪というのはアイゼン(雪や氷を登るため登山靴の底につける鉄の爪)の爪の本数の話だ。

連休前に会社や大学山岳会の山好きOBの方から「立山にスキーに行くのだけれど状況はどうだ」とか「月山なら宿はどこが良い?」などと色々な質問を頂いた。皆さん私より先輩なのだが実にお元気だ。

そんな中大学山岳部の十年位先輩の方から、4月の下旬に八ヶ岳連峰・赤岳地蔵尾根から横岳を縦走したというメールを頂いた。「横岳の縦走、結構厳しかったのでありませんか?」とリターンメールを出すと「厳しかった。鎖が氷に埋もれていて、十二本爪のアイゼンが刺さらずピッケルでカッティング(ピッケルで氷を砕き足場を作ること)しながら登った」というお返事がきた。

私も十二月の横岳から赤岳を縦走したことがある。中々スリルのあるところだが、初冬の山に氷はなく難渋するところはなかった。しかし春は日中気温が上がって解けた雪が夜中に凍るので日陰の岩場にはブルーアイスが発達することがある。こうなると大変だ。本格的な十二本爪アイゼンでも爪が1,2mmしか入らないこともあり誠に心もとない。

70歳前後の大先輩がそんな厳しい山登りをしていると聞くと熱くなってくる。

私達の会社の山の会の話をすると、今年は2月の蓼科山を登り、2週間ほど前に四阿山を登り、明日尾瀬の至仏山に登るという具合に結構雪山を歩いている。ただし使っているアイゼンは六本爪だ。

登山道具が全般に良くなった(スリーシーズン用の登山靴でも防水がしっかりしているので雪山を登っても平気だ)ことや、道路網の発達、暖冬・小雪のお陰で本格的な雪山装備がなくてもかなりの山まで登ることができる。

ただ六本爪アイゼンと十二本爪アイゼンの間には厳然とした壁があることは覚えておきたい。それはアルピニズムの壁だ。単にアイゼンの爪の数を増やすだけで硬くて急な雪や氷の斜面を登ることができる訳ではない。万一スリップした場合確実に止めるピッケルワークやザイルワークが必要なのだ。ただしそれは本当に好きな人が時間をかけて学べば良い。

私は会社の仲間達と六本爪で雪山を歩きながら、下界では味わうことができない感動の雪景色に遭遇している。それぞれの雪山があって良いと思う。

赤岳を中心とする南八ヶ岳は山岳事故の多い地域だ。積雪期はスリップ事故が多い。その原因の一つが六本爪などの軽アイゼンで硬い雪や氷の斜面に入りスリップするというものだ。六本爪アイゼンはあくまで雪道歩きの補助道具であることを覚えておきたいものである。

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