4月27日に内閣府が発表した日本人の幸福度は10点満点の6.5点。これは幸福度に対する初めての意識調査だ。同様の調査を行っている欧州28カ国の平均は6.9点で最高はデンマークの8.4点。英国7.4点、フランス7.1点なども日本より高い。
だがこのような「幸福度」に関する調査は調査機関や調査手法により相当異なる。例えば英国の経済基金ハッピープラネットが行っている幸福度調査(平均寿命、生活に対する満足度、環境汚染などが加味されたもの)によると、日本の幸福度合いは世界で75番目(2009年度)で、英国の一つ下。因みにデンマークは105位とかなり低い。米国も114位とかなり下だ。アジア諸国で上位に来ているのはベトナム5位、フィリッピン14位、中国20位などだ。http://en.wikipedia.org/wiki/Happy_Planet_Index
このことからハッピープラネットによる幸福度は国民一人当たりGDPの大きさや平均寿命と余り相関関係がないことが分かる。
平成22年度の国民生活白書は、1987年から一人当たりGDPがほぼ一貫して上昇しているにもかかわらず、生活満足度はほぼ一貫して低下しているグラフを示し、「所得上昇は幸福度に結びついていない」と結論付けている。
またジニ指数を使い76カ国について所得格差と幸福度の相関関係を分析して、「所得の不平等と幸福度は相関していない」と結論つけている。
では所得が多い人ほど幸福度が高いということはないのだろうか?これについて生活白書は統計を示していない。この辺りが日本の世論調査の詰が甘いところだ。あるいはポリティカルな議論を呼びそうな分析は避けたのだろうか?
米国のPew Researchの調査によると、幸福度と家計所得の間には強い相関関係がある。年収10万ドル以上の所得層では49%の人が「大変幸せ」と言い、7.5万ドルから10万ドルの所得層では38%の人が「大変幸せ」、3万ドルから7.5万ドルの所得層では33%の人が「大変幸せ」と言う。そして3万ドル以下の所得層の人は24%が「大変幸せ」と言っている。
ただし「所得が高いこと」と「幸福度が高いこと」の間に強い相関関係があっても、このことは「お金で幸福を買える」という因果関係があるかどうかまでは判断できないだろう。幸福度が高いから仕事に意欲が出て所得が高くなるという逆の因果関係もありうるからだ。
ところで年代別に幸福度を見ると日本の一つの特徴が見えてくる。それは「高齢になると幸福度が減少する」ということだ。国民生活白書は米国と日本の年齢別幸福度をプロットしたグラフを示している。http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h20/10_pdf/01_honpen/pdf/08sh_0103_02.pdf
このグラフを見るとアメリカ人は「年をとればとるほど幸福になる」ように見えるがこれはやや誇張だろう。Pewの調査ではアメリカ人の65歳以上の年齢層で「大変幸せ」という人は38%で、50-64歳の33%や30-49歳の36%を上回ることを示している。むしろアメリカ人の場合、年齢は幸福度と無相関であるという意見の方が正しいようだ。
内閣府調査によると日本の場合、幸福度7点(10点満点)をつけた人は50代で55%、60代で51%、70歳以上で44%と年齢が進むにつれて幸福度が低下する。これについては内閣府は原因ははっきり分からないとしている。
日本人の場合何故年齢が高いことが幸福度にマイナスの影響を与えるのか?ということを真面目に分析すれば、かなり面白い論文が書けると思うがそれは将来の課題にしよう。