金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

信用収縮が南欧の民間企業を苦しめる

2010年05月19日 | 金融

ニューヨーク・タイムズは「ギリシアの債務危機で欧州企業は貸し渋りにつかまる」というタイトルで信用収縮の状況を報じていた。

欧州の銀行の貸出はギリシア危機以前でも減少していた。欧州中銀のデータでは今年第1四半期に貸出は年率換算2%以上減少している。社債による資金調達も落ち込んでいる。タイムズはDealogic社のデータを紹介しているが、それによると3月の社債発行額は583億ドルだったが、4月は285億ドルに減少し、今のところ5月は50億ドルに激減している。

特に影響が大きいのは国の格付が低下しているギリシア、ポルトガル、スペインなどだ。これは多くの場合、格付機関がソブリン・シーリングつまり国債格付を企業格付の上限とする慣行があるからだ。

貸し渋りの影響は南欧諸国の中堅・中小企業で顕著だが、ドイツ、フランスの大企業は影響を受けていない。ドイツの企業向けソフトウエアの大手SAPは4月に5,000億ユーロの社債を2.5%で発行している。資金調達力のある企業とない企業の差は顕著になってきた。

もしこのような状態が持続すると、信用力の高い国の企業と低い国の企業では資金調達力の差が縮まらないだろう。その結果ギリシア等の企業は設備投資を抑制せざるを得なくなり、経済成長率が低下し、税収も落ちるという悪循環が続く可能性がある。

単一通貨のユーロ圏では為替レートを切り下げて輸出競争力を高めるという手段は取れないから、南欧諸国の企業はドイツなどの企業に対してますます競争力を弱めるという罠にはまりそうだ。

ユーロ圏の問題に中々出口は見えてこないようだ。

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Smoking gun(イディオム・シリーズ)

2010年05月19日 | 英語

Smoking gunは直訳すると「(発砲後の)煙の出ている銃」という意味。転じて「動かぬ証拠」という意味で使われる。

米国の外交問題シンクタンクCouncil Foreign RelationsのHPに次の文章が出ていた。. China is unlikely to accept condemnation of North Korea at the UN Security Council without a “smoking gun” that directly links North Korea to the Cheonan incident.

「中国は(韓国の哨戒艦)天安の事故と北朝鮮を直接結びつける動かぬ証拠がない限り、国連安全保障委員会による北朝鮮決議を受け入れないだろう」

韓国政府が19日に明らかにしたところでは、天安沈没現場付近で回収された魚雷にスクリューの刻印やシリアル番号が北朝鮮の字体だった。韓国政府は明日天安が北朝鮮から魚雷攻撃を受けたと結論付ける報告書を発表する予定だ。

韓国の一つの選択肢は中国を含む関係国の強い経済制裁だが中国が簡単に同調する可能性は高くないようだ。魚雷の刻印はかなり「動かぬ証拠」に近いと思うのだが、中国や北朝鮮はどのような反論をするのか興味のあるところだ。

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【数字は語る】日本人の幸福度は6.5点

2010年05月19日 | うんちく・小ネタ

4月27日に内閣府が発表した日本人の幸福度は10点満点の6.5点。これは幸福度に対する初めての意識調査だ。同様の調査を行っている欧州28カ国の平均は6.9点で最高はデンマークの8.4点。英国7.4点、フランス7.1点なども日本より高い。

だがこのような「幸福度」に関する調査は調査機関や調査手法により相当異なる。例えば英国の経済基金ハッピープラネットが行っている幸福度調査(平均寿命、生活に対する満足度、環境汚染などが加味されたもの)によると、日本の幸福度合いは世界で75番目(2009年度)で、英国の一つ下。因みにデンマークは105位とかなり低い。米国も114位とかなり下だ。アジア諸国で上位に来ているのはベトナム5位、フィリッピン14位、中国20位などだ。http://en.wikipedia.org/wiki/Happy_Planet_Index

このことからハッピープラネットによる幸福度は国民一人当たりGDPの大きさや平均寿命と余り相関関係がないことが分かる。

平成22年度の国民生活白書は、1987年から一人当たりGDPがほぼ一貫して上昇しているにもかかわらず、生活満足度はほぼ一貫して低下しているグラフを示し、「所得上昇は幸福度に結びついていない」と結論付けている。

またジニ指数を使い76カ国について所得格差と幸福度の相関関係を分析して、「所得の不平等と幸福度は相関していない」と結論つけている。

では所得が多い人ほど幸福度が高いということはないのだろうか?これについて生活白書は統計を示していない。この辺りが日本の世論調査の詰が甘いところだ。あるいはポリティカルな議論を呼びそうな分析は避けたのだろうか?

米国のPew Researchの調査によると、幸福度と家計所得の間には強い相関関係がある。年収10万ドル以上の所得層では49%の人が「大変幸せ」と言い、7.5万ドルから10万ドルの所得層では38%の人が「大変幸せ」、3万ドルから7.5万ドルの所得層では33%の人が「大変幸せ」と言う。そして3万ドル以下の所得層の人は24%が「大変幸せ」と言っている。

ただし「所得が高いこと」と「幸福度が高いこと」の間に強い相関関係があっても、このことは「お金で幸福を買える」という因果関係があるかどうかまでは判断できないだろう。幸福度が高いから仕事に意欲が出て所得が高くなるという逆の因果関係もありうるからだ。

ところで年代別に幸福度を見ると日本の一つの特徴が見えてくる。それは「高齢になると幸福度が減少する」ということだ。国民生活白書は米国と日本の年齢別幸福度をプロットしたグラフを示している。http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h20/10_pdf/01_honpen/pdf/08sh_0103_02.pdf

このグラフを見るとアメリカ人は「年をとればとるほど幸福になる」ように見えるがこれはやや誇張だろう。Pewの調査ではアメリカ人の65歳以上の年齢層で「大変幸せ」という人は38%で、50-64歳の33%や30-49歳の36%を上回ることを示している。むしろアメリカ人の場合、年齢は幸福度と無相関であるという意見の方が正しいようだ。

内閣府調査によると日本の場合、幸福度7点(10点満点)をつけた人は50代で55%、60代で51%、70歳以上で44%と年齢が進むにつれて幸福度が低下する。これについては内閣府は原因ははっきり分からないとしている。

日本人の場合何故年齢が高いことが幸福度にマイナスの影響を与えるのか?ということを真面目に分析すれば、かなり面白い論文が書けると思うがそれは将来の課題にしよう。

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【数字は語る】国会議員を信頼できない人47%

2010年05月19日 | インポート

昨今の政治の状況を見て「政治家というものは信頼できないなぁ」という思いを改めてお持ちになる方も多いと思う。一体どれ位の人が政治家に不信を持っているのか興味を持ち、社団法人 中央調査社が2010年3月に行った「議員、官僚、大企業、警察等の信頼感」調査を見た。それによると国会議員を「信頼できない」とした人は47%で、「信頼できる」とした人は6.7%だった。

国会議員より信頼度が低く、調査対象の機関・団体で最悪だったのが官僚で、「信頼できない」とした人は53%、「信頼できる」とした人は6.6%に過ぎなかった。

またマスコミ・報道機関の信頼度は3番目に悪く、33.4%の人が「信頼できない」と回答し、17.2%の人が「信頼できる」と回答した。

これらの機関・団体の信頼度が低いのは日本だけのことではない。米国ではPew Researchが同様の調査を行っているが、それによると議会に対してポジティブな見方をする人は24%でネガティブな見方をする人は65%、連邦政府に対する見方もほぼ同様で25%の人がポジティブ、65%の人がネガティブな見方を示している。またメディアについては31%がポジティブ、57%がネガティブな見方だ。

日本の回答の場合「どちらともいえない」という回答が多く、米国の回答は「どちらともいえない」が少ないので単純な比較はしにくいが、官僚・国会議員・マスコミの信頼度合いは総じて日本の方が低いといえそうだ。

とはいうものの、日本の前回調査(08年8月)に較べると、官僚・国会議員の信頼度は10%程改善しているということである。

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