金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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ユーロ諸国はCDSに似ている

2010年05月26日 | 金融

ファイナンシャル・タイムズのコラムニスト・Gillian Tett女史がAsian investors get cold feet on euro bonds「アジアの投資家はユーロボンドに尻込みする」という題でユーロ諸国の国債の問題を論じていた。

タイムズはバークレイズ・キャピタルが日本の債券投資家に行った調査を報じている。それによると3分の2の日本の投資家は7,500億ユーロの救済パッケージはユーロ圏の苦難に対してそれ程大きなインパクトはないだろうと懸念している。パッケージが発表された時、懸念を示した投資家は3分の1だったから倍増したということだ。また今年の初めの調査では8割の投資家はドル債よりもユーロ債を好んだが、現在では3割に低下している。

また中国の投資家もユーロ債に尻込みをしている~今持っている債券を売るという訳ではないが、追加購入を抑制するという意味で~という噂が広がっている。

Tett女史がアジアの投資家がユーロ債に尻込みする理由と上げているものは3つ。

第1は欧州の経済成長の低迷。第2がドイツで突然国債の空売り規制が行われたような予測できない政策決定。そして3番目が「個々のユーロ圏の国債のリスク評価の不確実性」だ。

ここで女史はユーロ国債をリーマンショックの原因の一つであるCDS(Collateralised Debt Obligation)に似ていると論じる。CDOは個々の信用力はそれ程高くない債務を沢山集めてプール化し、リスク分散効果で高い信用力を得る金融商品だ。

ユーロ圏の国債は「プール化」されているものではなく、個々の国が独自に国債を発行している。しかし投資家から見るとユーロ創設後はユーロ圏の国債を大まかにいうと同じようなプライシングをしていた~国毎の信用格差をスプレッドに織り込んでこなかった~ので、信用力の低い国はユーロ圏という「信用補完」を得ていた。

ところがCDOに対する信頼が失われたように、ユーロに対する信頼が失われたので投資家にとってユーロ圏の個々の国のリスクを測定することは難しくなった。その結果アジアの投資家は尻込みをしている・・・というのがタイムズの結論である。

☆   ☆   ☆

15年位昔の話だが私は銀行でソブリンリスクを評価する部門を監督していたことがある。ユーロ誕生前だったので、ポルトガルやギリシアなど個別の国毎にソブリンリスクを判定して、与信限度を設けていた。ギリシアは特に天井が低かったと記憶している。

だがユーロ誕生後は参加国毎にソブリンリスク管理は緩くなったのだろう。ところがここにきてソブリンリスク問題が急に復活してきた。金融機関などでもまたソブリン格付などでバタバタし始めたのだろう。

コメント (1)
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