金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

【数字は語る】日本41点、主要国最低の年金システム

2010年05月28日 | うんちく・小ネタ

今月めでたく?耳順を迎えた。引き続き仕事をするので公的年金は貰えないが裁定手続きをする必要はある。そんなことで年金問題に関心を持っていたところ、コンサルタント会社マーサーMercerの非常にショッキングなランキングを見た。それは世界の主要国の公的年金・企業年金について点数付けを行ったものである。

評価の切り口は「適切性」Adequacy40%、「持続性」Sustainability35%、「完全性」Integrity25%で100点が最高点だ。

総合得点が一番高かったのはオランダで76.1点で、以下オーストラリア74.0点、スウェーデン73.5点、カナダ73.2点少し飛んで米国59.8点、ドイツ48.2点、中国48.0点、そして最下位が日本の41.5点だ。11カ国の平均点は61.4点だから日本は平均点より20点も低い。

日本は「適切性」「持続性」「完全性」総ての項目で平均点を大きく下回っているが、特に点数が低いのが「持続性」で、平均点58.1に対し僅かに34.4点だ。持続性は更に幾つかの小項目に分かれているが、特に日本の点数が低い項目は「GDPに対する国の債務の大きさ」これはなんと零点(公的債務が問題になっている米国や英国でも各々5.3点、6.5点だ)。

もう一つ点数が低い項目は「平均寿命と年金支給開始時期のバランス」と「2030年時点における年金受給者の現役依存率の高さ」だ(これは二つで1項目となっている)。この点数が日本は10点満点中1.4点とずば抜けて低い。

マーサーのレポートは60数ページに及ぶもので、まだほとんど読んでいない(今後読むかどうか分からない・・・)が、日本の年季制度に対する改革提案を一部紹介したい。

  • 低所得層に対する最低年金額の引き上げ
  • 所得代替率の引き上げ
  • 確定拠出年金の従業員拠出部分に対する税制優遇の導入
  • 平均寿命の延びに対して公的年金の支給開始年齢の引き上げ・・・・

急速な少子高齢化に対し、公的・私的年金制度の改善が全く追いつかなかった結果、日本の年金システムは世界主要国の中で最悪の制度となってしまった。年金の不備を補うため、国民は貯蓄に励み、金融機関に集まったお金は国債に投資される。国は国債の販売リスクがほとんどないので不健全財政を続け、借金依存度を高めている。借金依存度が許容レベルを超え始めたので、年金制度全体の信頼が揺るぎだしている・・・・

というのが日本の年金の現状であろう。年金が心配なので耳順を過ぎても働き続ける人が増える。そしてその人たちが若者の就業機会を狭める。若い活力を持たない業界や企業は国際競争力を失い経済が停滞する・・・・という何とも困った悪循環である。

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中国国家外為管理局、ユーロ国債見直しに動く

2010年05月27日 | 金融

ファイナンシャル・タイムズによると、中国の外為会計を管理する国家外為管理局SAFEは最近外銀達とミーティングを持ちこの問題について討議を行っている。PIIGSへの懸念が為替管理局を慌てさせているのだ。

中国の外貨準備高は2兆4470億ドルで、ユーロ債の保有残高は約6,300億ドル相当と推定されている。ただ外貨の構成比率は国家秘密だ。外為管理局は昨年ドル資産のエクスポージャーを下げるため、ユーロ債の投資を増やすことを試みたが、再び大きな舵取り転換を求められそうだ。

以下は個人的な直感に過ぎないが、中国が外貨準備をドルに頼らざるを得ないということは、政治・外交面でも米国に優位性を回復させる。すくなくともリーマンショック後、中国が米国債を売ることを恐れていたような状況からは脱したと考えてよいだろう。ドルへの資金流入と投資家の米国債購入は米国の金利低下を促進する。

また外交面で米国は今までよりもレバレッジを持つと考えてよいだろう。中国の外為会計を見ていると規模は違えど昔の日本の生命保険会社を思い出す。国内で運用機会が少なくかつインカムゲインを配当原資に使えなかった生保はやむなく外債を購入して為替損を蒙った。

中国は民間の対外投資を縛っているため外為会計が為替損を蒙りやすい仕組みとなっているのである。

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アップル、時価総額でマイクロソフトを抜く

2010年05月27日 | デジタル・インターネット

明日4月28日、アップルが日本でiPadを発売する。日本でも予約が早々に締め切られるなど話題性は十分だ。だが米国ではもっと話題性に富む出来事が起きた。アップルがIT企業の頂点に立ったのである。

ニューヨーク・タイムズは昨日(5月26日)、アップルの時価総額(2,221億ドル)はマイクロソフトの時価総額(2,191億ドル)を抜いたと報じた。2社の収入はアップルが429億ドルでマイクロソフトが584億ドルだから、市場はアップルの将来性を高く評価しているということだ。

10年前は消滅の危機さえささやかれたアップルだが、ジョブスが戻ってきたから再生の足取りは速かった。

昨年PCの販売台数は306百万台で、スマートフォンの販売台数は172百万台。しかしスマートフォンの売上は5倍の速さで伸びている。

これはコンピュータ端末(PC、スマートフォンなど合わせて)がビジネスユースからパーソナルユースへ大きくシフトしていることの表れだ。アップルはうまくその波に乗ったといえる。アップルの商品群はiPods, iPhones, iPadsだ。音楽、情報、書籍に携帯端末からアクセスする道を開いてきたアップルが、時価総額で頂点に立ったことはコンピュータの活用方法の変化を示す象徴的な出来事だ。タイムズは「キーボードをガチャガチャいわせる音はスマートフォンのタッチスクリーンを操作する指の動きに領域を譲った」と述べている。

余談だがタッチスクリーンを操作する指の動きをthe swipe of a fingerというのはこの記事を読んで初めて知った。Swipeは「強打」だとか「サンプル調査」という名詞の他「(カードを)機械に通す」という意味がある。タッチスクリーンは強打する必要はないのだがどうしてswipeという単語を使うのかちょっと疑問。

余談を続けるとスマートフォンを買って最初にタッチスクリーンを指で操作した時は意図する場所(文字等)にタッチできず少し苦労した(なんせ指が太いものですから)。でも1日で慣れた。なれるとタッチスクリーンも「カッコ良い」。

話を本題に戻すと、今アップルの後を追うのはグーグルだ。グーグルの時価総額は1,514億ドル。私もグーグルのアンドロイドをOSにしたスマートフォンを使い始めたが利用方法はライフスタイルに合わせて広がる気がする。

ユーザに不必要な苦労をかけずに楽しみを極大化する・・・・IT企業はどこなのだろう?

熱い戦いに終わりはない。

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ユーロ諸国はCDSに似ている

2010年05月26日 | 金融

ファイナンシャル・タイムズのコラムニスト・Gillian Tett女史がAsian investors get cold feet on euro bonds「アジアの投資家はユーロボンドに尻込みする」という題でユーロ諸国の国債の問題を論じていた。

タイムズはバークレイズ・キャピタルが日本の債券投資家に行った調査を報じている。それによると3分の2の日本の投資家は7,500億ユーロの救済パッケージはユーロ圏の苦難に対してそれ程大きなインパクトはないだろうと懸念している。パッケージが発表された時、懸念を示した投資家は3分の1だったから倍増したということだ。また今年の初めの調査では8割の投資家はドル債よりもユーロ債を好んだが、現在では3割に低下している。

また中国の投資家もユーロ債に尻込みをしている~今持っている債券を売るという訳ではないが、追加購入を抑制するという意味で~という噂が広がっている。

Tett女史がアジアの投資家がユーロ債に尻込みする理由と上げているものは3つ。

第1は欧州の経済成長の低迷。第2がドイツで突然国債の空売り規制が行われたような予測できない政策決定。そして3番目が「個々のユーロ圏の国債のリスク評価の不確実性」だ。

ここで女史はユーロ国債をリーマンショックの原因の一つであるCDS(Collateralised Debt Obligation)に似ていると論じる。CDOは個々の信用力はそれ程高くない債務を沢山集めてプール化し、リスク分散効果で高い信用力を得る金融商品だ。

ユーロ圏の国債は「プール化」されているものではなく、個々の国が独自に国債を発行している。しかし投資家から見るとユーロ創設後はユーロ圏の国債を大まかにいうと同じようなプライシングをしていた~国毎の信用格差をスプレッドに織り込んでこなかった~ので、信用力の低い国はユーロ圏という「信用補完」を得ていた。

ところがCDOに対する信頼が失われたように、ユーロに対する信頼が失われたので投資家にとってユーロ圏の個々の国のリスクを測定することは難しくなった。その結果アジアの投資家は尻込みをしている・・・というのがタイムズの結論である。

☆   ☆   ☆

15年位昔の話だが私は銀行でソブリンリスクを評価する部門を監督していたことがある。ユーロ誕生前だったので、ポルトガルやギリシアなど個別の国毎にソブリンリスクを判定して、与信限度を設けていた。ギリシアは特に天井が低かったと記憶している。

だがユーロ誕生後は参加国毎にソブリンリスク管理は緩くなったのだろう。ところがここにきてソブリンリスク問題が急に復活してきた。金融機関などでもまたソブリン格付などでバタバタし始めたのだろう。

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北朝鮮は何故「天安」を沈めたのか?

2010年05月25日 | 国際・政治

今日の昼頃、韓国の聨合ニュースは「北朝鮮の金正日総書記が解放軍と予備兵力に戦闘準備をするように伝えた」と報じた。これを受けて韓国株やウオンは急落。日本株も300円程下げた。米韓と北朝鮮の武力衝突は避けて欲しいところだが、予想外の衝突が起きる可能性が出てきた。

ところで「北朝鮮はどういう狙いで天安を沈めたのか?」というのはお昼休みなどの話題に上っていることだろう。もっとも推測の域を出ない話なので長続きはしないだろうが・・・。私は米国のシンクタンク等がもっと確定的な見解を持っているか調べてみたが今のところ公表している限りではゲスワークの域を出ないようだ。

そんな中でファイナンシャルタイムズは7つの仮説を示していた。お昼の話題が少し盛り上がるようにご紹介したい。

【報復説】

昨年11月に黄海沖で韓国・北朝鮮の船が遭遇。銃撃戦で北朝鮮が被害を受けた。その報復とする説で韓国の諜報部は報復が北朝鮮の主な動機だと述べている。

【権力承継説】

金正日が権力を三男・金正雲にスムーズに承継させるべく、宣伝活動に使ったという説。北朝鮮に情報源を持つ市民グループは北朝鮮のある海軍基地で天安沈没を金正運の手柄と讃える祝賀会が行われたと述べている。

【内部権力闘争説】

何人かのアナリストは魚雷攻撃は一人の不法な司令官の仕業で、権力承継が本格化する中、恐らく恩を売る目的で動いたと考えている。しかし主流派のアナリストは金正日の許可なしには不可能であると考えている。

【強硬路線への回帰説】

何人かの学者は次のように主張している。「金正日は去年まで、市場と通貨の改革を主張するより進歩的なグループのアドバイスに耳を傾けていた。しかしそれが逆効果になったことで彼は暗殺や潜水艦攻撃を主張する冷戦時代のイデオロギー信奉者の意見を聞くしか選択肢がなくなった。」 ソウルのスパイ機関は北朝鮮から亡命した高官暗殺を狙う暗殺者を拘束している。

【指揮系統破綻説】

一番悩ましいことだが、金正日がもはや完全な指揮権を持っていないという仮説だ。その理由は脳梗塞の影響よる可能性が高い。司令官達の競い合いの結果かあるいは金正日の拙い判断の結果、天安攻撃が行われたという仮説だ。

【内政不満紛らわし説】

韓国軍諜報部は北朝鮮は飢えと経済政策失敗に対する国民の不満を紛らわすため、天安沈没を狙ったと主張している。しかし北朝鮮は公式には天安攻撃を否定している。

【G20サミット妨害説】

北朝鮮は韓国がオリンピックやワールドカップなど国際的な晴れ舞台で活躍しそうになると妨害を試みてきたので今回もその狙いがあるという説

なおタイムズには紹介されていなかったが、武器輸出のため魚雷の性能を誇示したという説もある。

さあ、どれが本当の理由なのだろう。そしてそれは何時か明らかになる時はあるのだろうか?

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