金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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大いに不安なパキスタン情勢

2008年08月19日 | 国際・政治

8月18日パキスタンのムシャラフ大統領が辞意を表明した。「強権政治に人心離反」と日経新聞は説明する。表面的にはその要素が強い。しかし見落としてはならないのは、パキスタンの諜報機関インターサービス・インテリジェンスInter-sevice Intelligence (ISI)の動きだ。ISIの起源はパキスタン独立時にさかのぼるが、力をつけてきたのは1960年代に起きたインドとのカシミール紛争時代だ。その後1979年の旧ソ連のアフガン侵攻に対抗するため、米国はISIを通じてターリバーン(日本ではタリバーンと書くことが多いが原音に近いターリバーンと表記する)を支援した。これを契機にISIは大きな力を持つようになり「影の政府」と呼ぶものもいる。

ニューヨーク・タイムズによると米国の諜報機関CIAはパキスタンの軍事情報についてISIに大きく依存していた。しかしここ数ヶ月米国政府はISIがターリバーンを実質的に支援していることに不満を示していた。そしてターリバーンによるアフガニスタンの米兵に対する攻撃が激化するにつれ、米国も態度を硬化させた。

先月CIAの次官がパキスタンのギラニ首相(反ムシャラフ派)を訪問してISIがターリバーンを支援している証拠やISIが7月に起きたカブールのインド大使館自爆攻撃に関与している証拠を示した。

そのその数週間後ギラニ首相は軍の支配下にあるISIを内務省の管轄下の置こうと試みた。しかしこれは軍の反対で失敗に終わっている。

これは私の推測だが、ムシャラフ大統領が軍とISIに対する支配力を失った時に米国はムシャラフを見限ったのだろう。しかしムシャラフに代わり、テロ対策を推進する指導者がいるかというと疑問だ。

ムシャラフ大統領辞任後、ザルダリ(暗殺されたベナジル・ブットの夫)率いるパキスタン人民党とシャリフ元首相率いるイスラム教徒連盟の連立政権が成立すると見られるが、ISIや軍を抑えることができるだろうか?

最大の問題はパキスタン国民がテロリズムに対する戦争は間違っていると考え、暗にターリバーンを支持していることだ。

以下は個人的な思い出を含む印象である。

私がパキスタンに登山に出かけたのは、35年位前の話なのでパキスタンを取り巻く国際情勢は異なる。しかしパキスタン人(特に北部辺境地の人々)の気質は変わっていないと思う。ターリバーンの中核をなすパシュトン人と私が訪れたスカルド方面の人を同列に論じて良いかどうか分からない。ただスカルドの奥のフンザ地方はイギリスの植民地時代も実質的に独立性を保ってきたところである。独立不羈の精神と優れた闘争能力。これが私がパキスタン辺境部に持つイメージである。

アメリカは彼等の力を利用してソ連のアフガン侵攻を食い止めた。今はその代償を払う時期である。誰が政権の座につこうとも、パキスタンは極めて困難な状態にある。

コメント
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