金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ビッグ3の行方

2008年08月21日 | 社会・経済

自動車産業の裾野は広い。自動車は2万点(やや曖昧な記憶によるが)の部品を持っているので、部品メーカーや下請企業が沢山関与する。従って自動車の動向は経済に大きな影響を与える。GM,フォード、クライスラーつまりビッグ3は世界で50万人以上の従業員を抱え、数十万人の退職者が年金に依存している。もしビッグ3の一つでも破綻することがあれば、米国のみならず世界の景気に大きな影響を与えることは間違いない。

ビッグ3が破綻する可能性について、ファイナンシャルタイムズ(FT)は「クレジットデリバティブの水準から判断するとGMが5年以内にデフォルトする可能性は80%でフォードがデフォルトする可能性は70%台の前半だ」と述べている。

これは私見だが、ビッグ3が近未来に破綻する可能性がどれ位か?ということを予想することは簡単ではない。しかしもっと予想が簡単なことは「10年後には自動車は今よりももっと売れなくなっているだろう」ということだ。先進国でガソリン消費が減速していることなどから、目先オイル価格は下がっている。しかしこれは一時的な現象に過ぎない。石油は必ず枯渇する有限な資源であり、10年後にはその有限性がもっとはっきりと誰の目にも入ってくるので、多くの人は車を買わなくなるだろう。

今年の初めに自動車メーカーは米国の自動車販売台数を前年並みの16百万台と予想したが、6月時点での年間売り上げ台数予想は12.6百万台に低下している。この減少幅は12の組立工場の生産高に匹敵する。

私は既に述べた様にガソリンで走る自動車は近未来に著しく減少すると考えている。ガソリンが高くなり過ぎて、救急車だとかパトカーなど公的な車両以外はガソリン(含むディーゼル)車を走らせるものはなくなるかもしれない。

その手前で自動車メーカーの合併が起きる。そしてその手前で「世界共通のプラットフォームで車両を製造する」ことが一般的になるだろう。生産コストを下げるため、車種はもっと絞る必要があるはずだ。

目先ビッグ3が生き残ることができるかどうかは「手元現金が十分かどうか」にかかっている。キャッシュの面で安全性が高いのはフォードだ。FTによると6月末時点でフォードは266億ドルの現金を持っている。これはムラリー氏が会長に就任して以来資金調達に注力した成果だ。しかし資産の大部分を担保に入れているので、これ以上の資金調達は難しい。フォードの業績は世界各地で販売するフィエスタと新しいF-150トラックにかかっている。

GMはフォードより手許現金では劣るが、資産を担保に差し入れていない分追加資金調達の余地はある。

一番力がないのはクライスラーだ。クライスラーは小型車へのシフトで遅れている。そこで日産と業務提携して日産の小型車を自社ブランドで売る予定だ。

業界通によるとビッグ3が持っている販売ネットワークは潜在的な買い手にとって魅力だという。販売ネットワークの構築に10年はかかるからだ。ビッグ3の状況がもっと厳しくなると、海外の自動車メーカーがこの販売網に魅力を感じて買収に動くかもしれない。潜在的な買い手は日欧の自動車メーカーには限らない。英国のランドローバーを買収したインドのタタ財閥なども候補の一つだろう。

しかし私はやがて売れなくなる自動車の販売網に高い金を払ってペイするのかどうか疑問を感じている。

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やせて運動しないよりは肥っても運動

2008年08月21日 | 健康・病気

健康診断の季節が一段落した。変な話だが政管健保の場合、国の補助金に早い者勝ち的なところがあり、年度の初めに健康診断を受けないと予算切れで検診を受けられないことがあるそうだ。今年はお腹周りを測るメタボ検診元年で、ヒヤヒヤした人もいるだろうが、受検した人に聞くと病院側も手心を加えているようだ。

私は男性の場合お腹周りが85cmを超えると一律メタボになるという基準を馬鹿げたものではないか?と思っていたが、自説をサポートするような記事をニューヨークタイムズで読んだ。

The Archive of Internal Medicalのレポートによると、5,400人以上のサンプル調査を行ったところ、太り気味の人の半分と肥満者の3分の1は「メタボだけれど健康」という状態にある。英語でいうとMetabolically healthy、ひょっとするとこのメタボリカリー・ヘルシーという言葉、日本でも使われるかもしれない(肥満気味の著名人が自己弁護のために使い出すとしたらだが)

医学的に太り気味とはB.M.I指数が25を超える状態を指す。例えば身長170cmの人は体重が72.25kgを超えると太り気味になる。肥満はB.M.I指数が30を超える場合だ。

米国医学協会が60歳以上の人2,600人について12年間調査を行ったところ、太り気味の人の死亡率はなんと、普通の人より少し低かった。だからといって体重が正常域にある人がワザワザ太り気味になる必要はない。体重が重たいとヒザや腰への負担が増えるので、色々な問題を引き起こす。生活の質という点では適正な体重を維持するにこしたことはない。

この研究で重要な点は「体重よりも運動の有無が死亡率に大きな影響を与える」と指摘している点だ。実験ではトレッドミル(=ランニングマシン)の早足レベルで男性なら最低8分(女性は5.5分)運動を続けるレベルから一分毎に運動量を強化する。この最低レベル(男性8分)の負荷に耐えられないようだと循環器系に起因する死亡リスクは一番高くなる。

ニューヨークタイムズの記事は「医者は体重計に注目するだけでなく、患者と運動の重要性について話をするべきだ」と結んでいる。肥満気味でも定期的に運動をしている人には朗報だ。そして運動せずにただ痩せていると人には警鐘をならす話だ。

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