「地球最後のオイルショック」(新潮選書 デイヴィッド・ストローン著 高遠裕子訳 1,500円)は、石油の枯渇についてジャーナリストである著者が170人を越える専門家にインタビューを行ってまとめたものだ。この本が日本で発刊されたのは今年5月のことだが、原書は2006年11月に出版された。著者はインタービューに1年半をかけているから、著者は原油価格が今日ほど上昇する前に「原油生産が近未来にピークに達し、その後減少に転じる」というピーク・オイル説に確信を持っていたと考えれられる。
300ページを越えるこの本は重要な二つのメッセージを我々に与える。一つは地球上の原油の究極埋蔵量の半分が消費される時点である。著者は各国政府や大手石油会社の推論や観測を慎重に分析しながら、2020年頃がオイル生産のピーク、すなわち埋蔵量の半分が消費された時点になることを示唆している。
次に筆者は各国の政治指導者は「ラストオイルショック」に適切な行動をとることができないだろうから、われわれ自身が日々の生活の中で、ラストオイルショックに備える必要があると述べる。具体的には「石油と天然ガスへの依存度を低くする」「ライフスタイルの転換を今から始める」「交通手段からライフスタイルを見直す」ということだ。
悲観的な話は面白くない。しかし「後10年か15年で地球に存在したオイルの半分を我々は費消した。その先は生産量は減少の一途をたどる」という面白くない事実を認めて行動する日が遠くないことをこの本は示唆する。まじめに近未来を考えるなら是非読むべき一冊である。