金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

規模の利益がスーパーの死活を握る

2008年08月15日 | 社会・経済

新聞を開くと不景気な記事が広がるようになってきた。今日(8月15日)の日経新聞のトップ記事は「日米欧、景気に後退色」~ユーロ圏で年率換算0.8%という99年以降始めてのマイナス成長、日本はマイナス2.4%~、「大手銀行・地銀 不良債権処理7割増」だ。経済・国際面に行くと「日米欧 新興国頼み鮮明」「製造業の収益環境悪化」と続く。その中で増益のニュースというと「ウォールマート16.8%増益」位だ。

日経新聞は「ウォールマートの増益は低価格戦略が節約志向を強める米国消費者のニーズと合致した」と増益理由を述べるが、もう少し詳しく見てみると、今小売業が対処しなければならない問題が見えてくる。

ファイナンシャルタイムズはウォールマートのリー・スコット会長の談話の中でまず「アメリカと欧州で始まった経済的困難(景気悪化)は、幾つかの発展途上国でも現れている」という言葉を紹介する。「英国では消費者はプライベートブランド商品を買い、多くの国で夕食のために安い肉を買っている。米国と同様に多くの国でバケーションが減らされ、外食を避けるようになっている」

ウォールマートの低価格戦略が消費者のニーズにあったことは確かだが、同社が在庫管理を強化し、在庫処分のための安売りを削減したことも増益に寄与している。米国の税金還付で第2四半期の売上が4.6%増加しているが、在庫の増加は0.4%に留めている。

またサプライチェーンにおける燃料高の影響を削減するために、トラック輸送の効率性改善に努めている。

ウォールマートは第2四半期決算終了時点で49億ドルのフリーキャッシュを持っている(1年前は8百万ドルのネガティブキャッシュポジション)。スコット会長はこの豊富な現金を使って企業買収の可能性を示唆している。

私は日本の小売業についてこれから非常に厳しい時代が到来すると考えている。需要面では高齢化と人口減少に伴う総需要の減退である。コスト面では「物流コスト」と「食品を中心とした在庫処分損」の問題である。

今日の日経新聞を見ると「イオン、鮮魚直接仕入れ」という記事があった。イオンが卸売市場を通さないで直接仕入れを始め、これにより水揚げから店頭までの時間を1日半短縮し、調達コストを最大1割下げるというものだ。これはイオンの規模にして出来ることだろう。

ウォールマートやイオンの動きを見ているとスーパー業界において規模の利益が死活を制する時期が視野に入ってくる。

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