にわかには信じられない話だが、S&Pが今週火曜日に発表したところでは、2006年に実行されたサブプライム・ローンの41%以上が遅延を起こしている。10人の内4人が遅延を起こしているというのは「借りた金を返さなくても良い」という風潮がアメリカの低所得者の中に広がっているのではないか?という懸念を抱かせる。サブプライムよりワンランク上のAlt-Aというクラスの住宅ローンでも2006年に実行された分の延滞率は21%を超えるとS&Pは予想している。
米国の住宅ローンはこのような無茶苦茶な状態であり、その結果住宅ローン証券化のご本尊のファニーメイとフレディマックを中心に金融株が売り叩かれ、そのあおりを食らって比較的健全な(今回は!)日本の銀行株まで売り込まれているというのが今の金融株の相場だ。
過去1年間にフレディマックの株価は95%下落している。S&Pの金融インデックスは42%下落している中でフレディマックと並んで突出しているのが、リーマン・ブラザースだ。リーマンの株価は76%下落している。
メリル(68%下落)、シティ(64%下落)に較べて、リーマンの株価の下落が激しいのはリーマン・ブラザースのビジネスが資産担保証券の引き受け業務に依存する度合いが高いからだ。資産担保証券の発行は前年に較べて8割方落ち込んでいる。ニューヨーク・タイムズによるとリーマンの引き受け業務は9割以上落ち込んでいる。これでは株価が下がっても当然である。
ニューヨーク・タイムズはランデンバーグ・トールマンのアナリストの意見を伝えている。リーマン・ブラザースの経営陣は明確な将来プランを示せないが、株価が急落しているので敵対的買収が起きる可能性があるというのだ。
ファニー・フレディ・リーマン、この3社の問題が解決しない限り米国株の底入れはないのだろう。そうだとするとリーマンに買収がかかることは、株式市場には良いサインだ。
日本の金融株をみると、メガバンク株の下落率が信託株などよりは相対的に低い。これもメガバンクの方が多様なビジネス機会を持っている(と市場が思う)からだ。
「資産担保証券市場の収縮」「住宅・不動産価格の急落」「原油・商品価格の急騰」「自動車産業の凋落」「中東・中央アジアの軍事的緊張」など世界はかってない程、リスクが多様化した時代に入った。事業分散が唯一のリスクヘッジかもしれない。