金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

インドが金融の中枢を握る日

2008年08月12日 | 社会・経済

インドの業務受託会社の役員達が好む冗談に「色々な投資銀行の業務がインドにアウトソースされる結果、ニューヨークやロンドンの投資銀行の役員達がすることは、お客をもてなし、ディールがクローズする時に握手することだけになる」というものがある。

ニューヨーク・タイムズによると、信用危機問題で徹底的な経費削減を強いられる投資銀行は、ミドル・オフィス的な仕事をインドや東欧圏にアウトソースすることを加速させている。ミドル・オフィス的な仕事というのは、投資リサーチや計量分析だ。これらの仕事はMBAを卒業して投資銀行に入った若い人達の仕事だった。彼(女)等の年収は日本円で1千数百万円だ。この仕事をインドに持っていくとどれ位のコストダウンになるか?新聞に情報はないけれど、数分の1になることは間違いない。

今年ニューヨークの金融機関が払う給料は総額で昨年に較べて2兆円弱ダウンすると見られている。また2009年までに金融機関は20万人の人員削減をする予定だが、その埋め合わせを海外への業務のアウトソースで行う訳だ。

アウトソースといっても、自社のインドの拠点を使う場合もある。例えばシティはリテイル業務をやっているので、当然インドでの従業員も2.2万人の多い。その内の数百人は本社の投資リサーチを請け負っている。

会計事務所のデロイトによると、理論的にはミドルオフィス的な業務の4割はコストの安い海外にアウトソースできるということだ。

もっともニューヨークから大きな雇用機会を奪うこのプロジェクトは「微妙な問題」なので、投資銀行のトップ達もコメントを控えている。

だがもしドンドンアウトソースが進んでいくと、冒頭に述べたようにニューヨークやロンドンには一握りのセールス・パーソンがいれば済むという事態も起こりかねない。海外への業務委託は短期的には収益改善策になるが、長期的には金融センターであるニューヨークやロンドンの雇用力つまり経済基盤を失わせる可能性が高い。

そして安くて質の高い労働力を使う欧米の投資銀行に対して、日本の大手金融機関が対抗策を講じることが出来なければ、結局コスト競争力とディール・スピードで負けてしまうことになる。

知的な業務をアウトソースすることをKnowledge process outsourcingとかHigh value outsourcingというそうだが、これからのキーワードになるかもしれない。もっともこれらの言葉が「日本語」になるころには、勝負は決まっている可能性が高いのだが。

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機関投資家、金融機関の破綻を予想

2008年08月12日 | 金融

機関投資家は近い将来に大手金融機関が破綻する可能性が高いと見ている。これは欧米の機関投資家にグリニッジ・アソシエイツが調査をかけた結果だが。

FTによると、グリニッジは米国、カナダ、欧州の146の機関投資家(銀行、ヘッジファンド、投資信託、年金基金など)に調査を行った。その結果6割近い米国と欧州の機関投資家は6ヶ月以内に大手金融機関の破綻が起こると考え、15%の投資家は6ヶ月から12ヶ月の間に破綻があると考えている。

グリニッジのコンサルタントFeenstra氏は「大部分の機関投資家はグローバルな金融サービス会社にとって今が一番危険な状態にいると考えている。恐らく向こう半年が無事であれば、悲観論のレベルは下がるだろう」と述べている。

米国の連銀の主導の下、各国の中央銀行はクレジット・デリバティブのディーラー達にクレジット・デリバティブに関するシステミック・リスクを削減するように圧力をかけている。システミック・リスクとは個別金融機関の倒産や特定の市場の決裁機能不全が、市場全体に影響を及ぼしドミノ倒しを起こすことだ。

米国の機関投資家は特にカウンターパーティ・リスクに敏感になっている。機関投資家の8割は昨年銀行が担保掛目を厳しくしたと言っている。

☆     ☆     ☆

ベア・スターンズに次ぐ金融機関の破綻があるのかどうかは分からない。しかし8割以上の機関投資家が懸念を抱いているということは、金融セクターへの投融資を抑制することを意味する。これは銀行の短期資金調達コストを高め、その結果企業の調達コストを高める。

これらはいずれも株式市場には悪材料だ。米国ではサマーラリーといって夏に株価が上昇する傾向があるが、今年は長続きしないと見ておく方が懸命だろう。時価総額の大きい金融機関の株価が上昇しないと市場全体は伸びないからだ。

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