桃栗三年、柿八年という諺になぞらえると日本10年、アメリカ5年といえるかもしれない。何が10年や5年かというと不動産バブルの崩壊から立ち直る年数である。不動産と株のバブル崩壊後日本は「失われた10年」という低成長期を経験した。一部の人はアメリカのバブル崩壊の日本のそれとの近似性からアメリカの立ち直りに長い時間がかかると予想する。しかし大部分の人はアメリカは日本と同じ道を辿らないと考えている。
エコノミスト誌は最近日米のバブルを比較している。それによるとバブルの傷自体はやや意外だが、アメリカの方が大きいところがある。例えば平均的な住宅価格は日本で1985年から91年にかけて51%上昇しているが、アメリカでは2000年から2006年に90%上昇している。日本の住宅価格はその後40%下落している。米国の住宅価格は既に20%下落しているが、更に10%以上下落すると見ている人が多い。
商業用不動産については同じ期間に日本では8割上昇し、米国では9割上昇している。従って米国の方が不動産バブルの度合いは大きいとエコノミスト誌は言う。
日本では同時期に株式バブルも崩壊したが、個人で株を所有している人が人口の3割なので、株式所有が半分を超える米国より家計に与える影響は少ないというのが同誌の主張だ。また貯蓄率の違いも米国に不利だ。日本では90年代初めに15%だった貯蓄率は2001年には5%に低下している。この分消費が増えたが米国にはこのような糊代はないとエコノミスト誌は主張する。
以上のように米国のバブルの傷跡の方が日本のそれよりも大きい面があるが、多くの人が米国は日本のように長い景気低迷を経験しないだろうと判断する根拠は金融市場と政治構造が、含み損を実現させ早期のバラスシートの改善を促すからだ。これに較べて日本では小出しで金融システムへの公的資金投入が行われたため、バブル処理が遅れた。(他にも97年に消費税を上げた等政策の誤りはあるが)
又バブル崩壊後日本は円高が続いたが、米国の場合はドル安となり輸出が伸びていることもプラス材料だ。
しかしエコノミスト誌が指摘していない大きな弱みが今の米国にある。それはオイル価格の上昇による自動車産業の低迷だ。またガソリン価格の上昇は米国の住宅市場を構造的に変える可能性があると私は見ている。つまり諸費者の都心回帰志向が高まり、郊外の大きな一戸建て住宅の価格は未来永劫回復しない可能性があると私は見ている。バブル崩壊とオイルショックの二重奏。これは日本が経験しなかったものだ。
米国の試練が日本のバブル崩壊より格段に軽いという訳ではないだろう。個人の直感的な判断だが、米国の立ち直りに要する時間を5年とみた。長過ぎるかもしれないが、その位の積もりでモノゴトを見ておいた方が失望が少なくて済むと私は考えている。