金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ウオール街の肌寒い夏

2011年06月17日 | ニュース

ニューヨークの緯度は弘前と同じだが、梅雨がない分早く夏が来る。そろそろ30度位まで気温が上がりそうだ。だがウオール街については少し肌寒い夏になりそうだ。ニューヨークタイムズによると、多くの投資銀行(証券会社)が、経費や人員の削減を考えている。

先を読むことで金を儲けることが仕事である(時々外れて損もするが)、投資銀行が相場の先細りを見越して経費削減に動いていることは、モノゴトを考える上で参考になる。ウオール街で一番収益力のあるゴールドマンザックスでさえ、向こう1年間で10%=10億ドルの経費(人件費外で)削減が必要だという結論に至っている。人員削減については最終目標は決めていないが、レイオフは避けられない見通しだ。

バークレイズ・キャピタルは既に全世界ベースで全社員の2%、600名を解雇している。

投資銀行が経費と人員の削減に動き始めている理由は、当面投資家のリスクテイク意欲が低下し、取引ボリュームが低下するという先行き判断と、金融規制改革法(ドッド=フランク法)の施行によるトレーディング活動の制限に対する懸念だ。金融規制改革法はこれから決められることが多いが、店頭デリバティブの規制などで投資銀行の収入源が減ることが見込まれる。

もっとも大きな商業銀行部門を持つJPモルガンやシティグループにとっては収入源が分散されているから、投資銀行ほど人員削減は喫緊の課題ではない。JPモルガンの幹部は、人員削減計画はないが、経費削減には努めていると話している。

金融機関の経費削減や人員削減は、金融界への依存度に高いニューヨーク、更には米国景気にもマイナス材料だ。

あちこちで暗い話が多い夏である。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エマージングでもパッシブファンドが強い

2011年06月17日 | 投資

ロイターに「新興国市場でもアクティブ運用よりパッシブ運用が高いパフォーマンスを上げている」というあるアナリストのコメントが出ていた。

記事によると米国の投資家は、月に20億ドル程エマージング市場の投資信託に資金を投入している。この投資の背景には核となっている二つの信念がある。一つは「中国、インドその他のパワーハウスは引き続き、投資家に大きなリターンをもたらす」というものでもう一つは「賢いポートフォリオマネージャーは、最良の株を見つけることができるので、高い運用報酬を払う意味がある」というものだ。

実際今年エマージング市場のパッシブファンドから21億ドルの資金が流出し、アクティブファンドに70億ドルの資金が流入している(リッパー社による)。

この投資家の好みを追いかけて、パッシブ運用の大手バンガード社もエマージング・マーケット・セレクト・ファンドというアクティブ投信の販売を開始した。

ご承知のとおり資産運用には「効率的市場仮説」という重要な概念があり、先進国の効率的市場では、株価を動かす情報は瞬時に株価に反映されるので、いかにスマートなファンドマネージャーでも市場平均を上回るリターンを上げることができないというものだ。

だが逆にいうと非効率的な市場では、スマートなファンドマネージャーは市場を出し抜くことができるのではないか?という推論が働く。

では事実はどうだったか?というと過去3年のエマージング市場のパッシブファンドとアクティブファンドのリターンを見るとパッシブファンドのリターンが上回っていた。リッパー社によると、パッシブファンドの年平均リターンは1.87%で、アクティブファンドのリターンはマイナス0.95%だった。

さらにアクティブファンドはパッシブファンドを1%以上上回る運用報酬をチャージするから、投資家の実際のリターンは更に拡大する。

☆  ☆  ☆

恐らく運用の専門的理論からは、3年程度のパフォーマンスの差を持って「こちらが良い」と判断することは間違いということになるかもしれない。だが「エマージング市場だからアクティブ運用が市場平均を上回る」と思い込むのも危険だ。百歩譲って優秀なファンドマネージャーは市場を出し抜くとしても、そのファンドマネージャーを見つけることができるかどうかは大きな問題だ。

資産運用のもう一つの重要な概念は「分散投資」だ。分散投資と効率的市場仮説を組み合わせると、新興国のインデックスにまとめて投資するiShares MSCI Emarging Market Index(ETF)などがリスクリターン面で優れた投資だろうと私は考えている。

もっとも今が投資のタイミングかどうかということは別の話であるが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする