人の財布の中を数えたところで自分の財産が増える訳でもないが、お金持ちのことは世界の関心事らしい。メリルリンチはCap Geminiとともに世界の富裕層レポートを22日に出していたが、エコノミスト誌やFTがこれを取り上げていた。
FTは「百万長者は景気停滞をうまくかわす」という題で、富裕層(投資可能な資産を100万ドル以上持っている人)は、リーマンショックをはさんで資産を増やしている点にフォーカスしていた。
世界の富裕層の資産は金融危機前の2007年には、40兆7千億ドルだったが、2010年には42兆7千億ドルに拡大している。富裕層の資産拡大に寄与したのは、株価の上昇とアジアの成長だ。2010年末のアジア太平洋地区の富裕層の数は3.3百万人、これは北米の3.4百万人よりは少ないが、欧州の3.1万人よりは多い。09年末ではアジア太平洋と欧州の富裕層の数はともに3百万人だったから、アジアの躍進が目立つ。
エコノミスト誌は国別の状況に着目したグラフを提供していた。それによると世界で一番富裕層が多いのが米国で3.1百万人。第2位は日本で1.7百万人程度、3位がドイツで90万人程度、4位中国50万人強と続く。
人口1千人当たりの富裕層の数では、日本は13.6人とスイスについで2番目に高い。スイスは1千人中31.4人が富裕層と圧倒的に比率が高いが、日本はアメリカ(1千人に10.1人)やドイツ(同11.3人)を押さえている。
ところで少し前に「日本で生活保護を受けている人の数が2百万人を超えた」(正確には202万人)というニュースがあった。これは日本の総人口128百万人の1.6%に相当する。一方投資資産100万ドル=約8千万円以上の富裕層の割合は約1.3%だ。
日本が格差社会であるかどうかについては色々な意見があるだろうが、この二つの数字を見た時、世界中の常識的な人は「日本は他の国より格差が大きい社会である」という印象を持つだろうと私は考えている。
そして景気の低迷が続く中で、格差は拡大しているということがメリルのレポートから推定されるのである。