インフレ抑制のため、金融引締めに動いている中国で中小企業の資金繰り逼迫が大きな問題になりつつある。
FTによると上海証券ニュースは、昨日中華全国工商連合会が「政府の金融引締めにより、中国の中小企業はリーマンショック時より悪いかもしれない資金繰り難に直面している」と警告を発した。
記事のタイトルはChina's SMEs face severe cash crunch. Cash crunchまたはcash squeezeは金詰り、資金繰り難。Crunchは金融用語では「引締め」という意味で信用収縮はcredit cruchだ。
中国政府は銀行に対して、民間企業救済を求めているが、信用収縮が起きている。中国の銀行は伝統的に政府支援により信用リスクが無視できると考えられる国営企業に融資することを選好する。特に昨年のように政府が引締政策を取る時はこの傾向が強まる。
FTによると数百万人の給料の遅配が起こり、社会不安が高まることに政府の懸念が高まっている。月曜日には潮州で約200名が政府のビルを包囲して、車に火をつけるという事件が起きた。リーマンショック後約2千万人の出稼ぎ労働者が失業したと推定されるが、今回の信用収縮がそれより悪いとすると同じ問題が繰り返される可能性がある。
クレディスイスによると、温州や厦門では過去数ヶ月間で、信用組合は闇金の貸出金利は月1.5%から月5%に上昇した。年利でいうと18%だったものが、60%になった!ということだからこれは大変な話だ。
中国の金融当局は今週初めに中小企業の資金繰り支援のため、銀行に対する規制を緩和するだろうと発表している。緩和策の一つは5百万元(約6千万円)以下のローンについては預貸率に算入しなくても良いというものだ。
FTは「中小企業に対する貸出促進政策は過去成功してこなかった。今週発表された政策も新しい問題を生むのではないか?」というアナリストの見方を紹介している。
☆ ☆ ☆
過去20年以上の中国の経済成長を支えてきた上海など沿岸部の中小企業が厳しい資金繰り難に直面し、企業活動の低下が予想される。この問題は先進国経済にも大きな影響を与える可能性がある。
また社会不安や暴動も大きな懸念材料だ。リーマンショックと今回の信用収縮の間にはアラブ諸国の反政府運動という新しい事態が起きている。
それにしてもアラブ諸国の反政府運動、日本の震災と津波と原発事故、ギリシアなど南欧諸国の財政危機、オイルやコモディティ価格の高騰、米国の国債発行枠問題、中国の中小企業問題・・・・・世界にはなんと多くの問題があり、そしてそれがまた微妙に複雑に絡み合っていることか・・・・