中国人は「白髪三千丈」(李白)が引き合いに出されるように誇張した表現が好きだ。イオンの開発担当役員のジェリー・ブラック氏がFTに語ったところによるとイオンは向こう10年で中国に最低でも2千店は出店するということだ。これも白髪三千丈式表現なのだろうか?
現在イオンが中国に出店している数は、同社の事業報告書によると65。内総合スーパー(GMS)は27でコンビニが9つ。足元の数字から見ると2千という数は誇張した表現ではないか?と疑いたくなる。
もっともライバルの海外大手スーパー、ウオールマートは既に中国に300店以上出店しているから、10年間で2千店という数字は不可能ではないのかもれない。
イオンは現在営業利益の10%を海外で稼いでいるが、2020年までには50%を海外で稼ぎたいとしている。イオンの国内店は高齢化が進む地方都市郊外を後背地としているため、国内の高齢化対策が急務だ。
個人的な話で恐縮だが、私は時々武蔵村山のイオンモールに出かけることがある。小売店は8割以上が若い女性向けなので、買い物は余りせず、もっぱら映画を見るためであるが。武蔵村山のモールを見る限り、若い家族連れが多く高齢化の影響が直ぐに及ぶとは見えにくいが、全国的には「2015年問題」(2015年に総ての団塊の世代が65歳に到達する)がヒタヒタと押し寄せているのだろう。
FTによるとイオンは2007年から2009年の2年間で8%に過ぎなかったアセアン諸国と中国向けの資本支出(設備投資)を11年から13年には25%に引き上げる計画だ。
ところで平均すると毎年中国に200ケ店づづ出店することになるが、ロジスティクスや人材面は追いつくのだろうか?イオングループは多数の中国人やその他のアジア人を内外で採用中だが、ブラック氏によると、2020年までに20万人の採用を行う予定でその8割は日本語を話せないだろうということだ。それでもイオンはアイデンティティを保つことができるのだろうか?
☆ ☆ ☆
もしこれらのことが実現すると、10年後の武蔵村山のイオンモールはどうなっているだろう。国内店は余り儲からないので、リノベーションが先送りされパッとしない店になっているかもしれない。また「上海での売れ筋商品」などが店先を席巻しているということがあるのだろうか?
イオンAeonはギリシア語で「永遠」の意味だ。中国進出が上手くいくと企業としては長く生き延びることができそうだが、中身は様変わりしているかもしれない。
ところで中国や東南アジアに進出できる小売り大手は活路を見いだすことができそうだが、海外に出る力やスケールメリットを持たないイオンの店子達はどこに活路を見いだすことができるのだろうか?
これからの10年は日本の小売業にとって本当に激動の時代になるだろう。これは白髪三千丈的誇張ではない。