金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

メガバンクが金利で頑張れる理由

2008年06月30日 | 金融

最近企業の財務担当者の話を聞くと「地銀の中には低い金利で融資をしてくれる先があるが、メガバンクの提示する金利は結構高い」という話を聞く。メガバンクの本部がどのような指示を出しているのか知らないが、「国内で金利競争をするよりも海外で高い金利で貸せるから、金利の安売り競争に巻き込まれるな」という類の指示が出ている可能性はある。

海外ローンはこの1年間で、みずほグループで10%、三菱UFJで20%、住友三井ファイナンシャルグループ(SMBC)で45%も伸びている。最近は海外の大型買収案件にも呼ばれていて、ベルギーのビール会社インベブがバドワイザーのアンファイザー・ブッシュを買収するディール(まだこの買収は決まっていないが)にも声がかかっている。海外金融機関に対する投資活動も活発だ。SMBCが英国のバークレーズ銀行に5億ポンド約1千億円の出資を決めたことは目新しいニュースだ。その前にはみずほグループが、メリルリンチに出資を決めている。三菱UFJは今大物を物色中というところだろうが、シンガポールなどでは投資を行っている。

国内資金需要が低迷しているので、メガバンクが欧米の金融機関のバランスシートが痛んでいる間隙をついて、投融資を延ばすことは当然である。少ない資金需要を多くの金融機関で取り合い、必要以上に貸出利鞘を縮めるより海外に打って出る方が賢明であろう。またそれにより純粋国内金融機関の過当競争が緩和されるのであれば、金融界全体でもハッピーであると考えるがどうだろうか?

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Cream off (イディオム・シリーズ)

2008年06月30日 | 英語

先週6月21日フィリピンのシブヤン島沖で大型フェリー(プリンセス・オブ・ザスターズ)が沈没し、800人近い犠牲が出るという惨事があった。エコノミスト詩によると、70名が遺体で発見され、744名の人は行方不明で、フィリピン当局は行方不明者が生きて発見される可能性は殆どないということだ。

そのエコノミスト詩の記事の中にCream offという表現があった。Cream offとは「表面からすくい取る」とか「最良のものを取る」という意味だ。原文はThe advent of cheap air travel has creamed off the highest-paying passengers.である。Adventは出現ということだが、Aを大文字で書くとキリストの降臨のことだ。文章の意味は「安い飛行機旅行ができるようになったので、一番高い料金を払うことができる人は(フェリーから)飛行機会社が奪い取った」という意味だ。

フェリー転覆のニュースを聞いた時、私は人災の要素が高いのではないか?と直感したが、当局の今後の調査の焦点は「なぜ船長が嵐の中を出航したのか」という点と「どうして沿岸警備隊が出航許可を与えたか」という点に集まりそうだ。

フィリピンは多くの島を抱えており、内国航路は多島経済にとってきわめて重要である。1987年に4千名以上が死亡するという世界最大の海難事故が起きた後、フィリピン政府は船会社に新しくて大きなフェリーを購入することを求めてきたが、航空運賃の低下で飛行機が割り込んできた。そこで高い飛行機運賃を払える人達は飛行機に奪われたということだ。Cream offという表現には「上層部の旅行客をすくい取る」という意味がよく出ていると思う。飛行機が船より早いことは確かで富裕層が飛行機に移ることは仕方がない。だがフェリーは安全性まで失ってはいけない。フェリー会社は安全第一で運行して欲しいものだと思う。

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