英語の新聞や雑誌を読んでいて、ひっかかるのは「動詞+前置詞」「動詞+名詞」などで構成される慣用句(イディオム)だ。読み飛ばしても、大体の文意は通じる。しかしちゃんと理解しておかないと自分では使い難い・・・というのが慣用句だ。
そこで勉強と自分のデータベースのため、ひっかかった慣用句を残しておくことにした。最初はJump the gunという言葉。意味は「先走りする」ということ。
今日読んだFTにMoody's jumped the gunという表現があった。これは格付機関のムーディーズが、先走りして保険会社の格付を引下げたことに対する証券業界のコメントである。Jumpという動詞は「飛ぶ」というのが一番一般的な意味だが、他動詞で「先走りする」という意味がある。つまりJump starter's gunで「スターターの合図のピストルより先走りする」という意味。Starterが取れてJump the gunでも同じ意味だ。なおJumpには「価格を急に上げる」という意味もある。The store jumped its prices. 「その店は値段を急に引き上げた」。有り難くない話だが、これからはこのような表現を新聞で見ることが増えるかもしれない。
ファイナンシャル・タイムズ(FT)は、先週ムーディズとS&Pが、モノライン保険会社(AmbacとMBIA)の格付を引き下げたことで、シティコープ・メリル・UBSが最大100億ドルの償却に迫られると報じている。
もっともこの100億ドルという数字について私は疑問を感じている。というのは記事の中で、オッペンハイマーのアナリストはUBSのモノラインに対するエクスポージャーは63億ドル、シティが48億ドル、メリルは30億ドルと述べているので、全体のエクスポージャーは141億ドルである。100億ドル償却するということは、7割の引当を積むということなので、大き過ぎる気がするのだが。
格付機関の格下について証券業界の経営者の中に「格下のタイミングに面を食らった。格付機関は先走り過ぎだ」と声を上げるものもいる。というのは格付機関はAmbacとMBIAの格付を最上格に据え置いたばかりだからだ。
FTによると、モノライン保険会社は1兆ドル以上の保証を行っているが、デフォルトに陥ったCDOは2千億ドルを越えた。これらのCDOは発行当時は大部分が最上級の格付を付与されていた。
格付機関がモノライン会社の格付を引き下げた理由は住宅ローンのデフォルトによる競売が増えているからであり、その背景は住宅価格の下落が持続していることである。
FTは投資銀行の追加償却を問題視しているが、私は大きな影響は米国で住宅ローンを行っている中小の商業銀行により厳しい悪影響がでると見ている。というのは投資銀行は資本増強で凌ぐことができるが、中小の商業銀行に資本増強の道はないからだ。中小金融機関の資本劣化は住宅市場の悪化につながる。
米国ではインフレ懸念から連銀が10月にも政策金利を0.5%引き上げるという観測が高まっている。金利の上昇は不動産価格を下落させる。米国の住宅市場には中々出口が見えない。
欧米各国がインフレ抑制のため、政策金利を引き上げるのではないか?という観測から長短金利の上昇が加速している。例えば金利引き下げが予想されていたカナダが金利を据え置いたことも、G7諸国が金利引き上げに動くという観測を強めた。
米国の金利先物市場は連銀が10月に50BP金利を引き上げることを完全に織り込んだ。また米国の2年国債は1月以降で一番金利が上昇して、一時2.94%にまで達している。金利の上昇はマネー市場にも及びドルの3ヶ月Liborは2.78%に達した。
またポールソン財務長官がドル安を防ぐために通貨介入の可能性を排除しないと発言して、ドル円レートは107円に上昇した。
さてこのまま円安が進むとガソリンや小麦等のコモディティを輸入に頼る日本でインフレが進行する。実際最近時々昼食を食べに行くレストランで今まで1,000円だったパスタランチが1,200円に値上がりしている。小麦粉の値上がりが原因だという。昨日はうなぎ屋が200円値上げをしていた(もっとも混んでいたので入らなかったが)
価格上昇は身近なところで置き始めている。もっともそれが日本で今すぐインフレにつながるかどうかは考えどころだ。というのは日本は中々糊代のある国で、パスタが値上がりすれば「どんぶりもの」でも食べるとか、少し安い店に回るといったクッションがあるからだ。しかしクッションが何時までも持つと考えるのは楽観的過ぎるだろう。
クッションがなくなる時、日本もインフレリスクに直面して金利引き上げにまわることになる。我々も主要国の金利上昇を他人事と見ない方が良いだろう。