金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

SUVが死ぬ日

2008年06月04日 | 社会・経済

昨日GMのワゴナー会長がSUVとピックアップトラックの組立を行っている4つの工場を閉鎖すると発表した。またGM傘下のハマー(ガソリンをがぶ飲みするSUVメーカー)ブランドを売却する予定だ。

ワゴナー会長は「1ガロン4ドルという高いガソリン価格により構造的な変化が求められている。ガソリンの値上がりは一時的なものではなく、恒久的なものだ。SUVの時代は終わった。これからは燃費の良い車作りに力を入れる」という発言を行っている。

SUV: Sports Utility Vehicleというと、私が乗っているX-Trailもその端くれにいるのだが、シビレータホだとかフォードのエクスペディションなど巨大な奴が主流だ。X-Trailなどはクロスオーバーと呼ぶカテゴリーかもしれない。

さて、何年か何十年かして「昔恐竜のようなSUVという車があった」なんて時代が来るのだろうか?

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貸し渋りの本質(2)~中小企業の問題

2008年06月04日 | 金融

最近は「貸し渋り」問題が、一方的に貸手側の問題であるといった論調は少なくなっていると思うが、借り手の問題を堂々と論じる論調も少ない。何故なら一般的中小企業特に小企業は弱者であり、また事業者であるとともに、生活者であり、そして隣近所のおじさん達であるから、厳しい意見を述べるのが憚られるからだ。

だが敢えて「憚られる意見」を述べると「金を借りることが出来ない小企業」や金融機関から見ると「金を貸してはいけない小企業」が増えていることは事実だ。

その第1の理由は「日本の社会が市場経済化するとともに、金融モデルが米国化(ないしはグローバル化)している」ということだ。このことの良し悪しはここでは議論しない。ただこの事実にそって物事を考えることにする。金融モデルが米国化するということは、実は小企業は簡単に融資が受けられないことを意味する。米国で事業を起こすものは、自己資金を用意するか、エンジェルと呼ばれる投資家の資金を株式つまりリスクマネーとして用意する必要がある。銀行は相当分厚いエクイティのクッション(つまり高い自己資本比率)がないと融資を行わない。しかもその融資は短期間に回収する運転資金が大半だ。一方日本では過去「底積み運転資金」といった形で、べた貸しの運転資金を融資してきた。だがこの様な融資は米国金融モデルの下では「回収可能性が低い問題融資」と判定され、引当金をつまされる可能性が高いのである。

このように「強い中小企業を残し、弱い中小企業を淘汰する」ことで、業界の過当競争を緩和し、共倒れになるような価格競争を減らすというのが、市場経済主義の考え方である。

話がやや長くなったが、簡単にいうと金融のグローバル化は中小企業に自己資本増強を求めると考えて良く、財務内容が悪い中小企業は昔より融資を受け難くなるのはその帰結である。

第2の理由は「規制緩和・公共投資削減や人口動態の変化で、非効率なサービス業は壊滅的な打撃を受ける」可能性が高いということだ。より正確に表現するとその様に判断している銀行があるということだ。そのような銀行は中小企業融資にシュリンクする。

このことは公共工事の削減で、倒産する建設業が増えていることなどを考えると分かりやすいだろう。以前は税金をやり繰りして、非効率な産業を援助したり、無駄な工事を行うゆとりがあった。いや、本当はその時もゆとりはなく、国の借金を次世代に回すだけのことだったのだが・・・・

ところで昨日読んだ夕刊ゲンダイでは「保証協会の保証範囲が8割になったので銀行融資が減った」という記事があった。私は筆者が真実を理解した上で敢えて話を面白くしていると信じたいが、これは消費者の負担を増やすだけの話である。つまり保証が付けば銀行融資は増えるだろうが、不良債権も増える可能性が高い。不良債権は回りまわって、消費者の負担となるのである。

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「貸し渋り」の本質(1)-銀行の事情

2008年06月04日 | 金融

昨夜少しお酒を飲んで地下鉄の構内に入ると日刊ゲンダイの「再燃貸し渋り不況」というタイトルが目に入ったのでつい買ってしまった。内容は大体分かっているのだが・・・・・。ざっと記事のポイントを見ておこう。

「金融庁は『貸し渋り』を防止するため、山本副大臣を全国に派遣。金融機関に貸し渋りをしないように緊急要請をしている」「メガバンク関係者によると『収益を上げるため貸出を増やしたいけれど、(中小企業の)経営状態が悪くてとても融資できる状況じゃない」「スコアリングモデル融資を導入したメガバンクが軒並み大型詐欺に引っかかった」「信用保証協会が8割しか保証しないので金融機関が融資に慎重になった」・・・・・いよいよ日本経済は怪しくなっている。

まず貸し手の事情を考えて見よう。大手銀行の中には中央三井のように、さっさと中小企業融資の旗を降ろしたところもあるし、三井住友のように店は開けているが実質閉店状況というところもある。いずれにせよ、スコアリングモデルによる中小企業融資は激減していることは確かだ。

では何が問題だったかというと次の3つの点が上げられる。第1の問題は「過去データの限界」だ。信用判定モデルというものは、企業規模や財務比率と過去の債務不履行の相関関係を回帰分析して、項目別の判定基準を設ける。ここでポイントになることは「十分な過去データが得られるか?作成したモデルを使って十分なバックテストができるか?」というところだが、日本では十分な債務不履行データが得られない。また「本来は倒産しているはずの企業を銀行が救済融資により救済」していることなどがあり、信用判定モデルが甘くなると考えられる。

第2の問題は「経済トレンドの急激な変化」である。信用判定モデルは過去のデータをベースに回帰的に構築されるので、経済や社会のトレンドが急激に変化すると対応できない。日本経済は「高齢化」「発展途上国から安価な商品の流入」「IT化」「規制緩和」等の急激な変化の中にいるので、過去のトレンドに頼り過ぎると過ちを犯す可能性が高い。

第3の問題は「中小企業が提出する財務データの信憑性」の問題だ。これは詐欺の問題とも絡むのだが、日本の中小企業は多数の金融機関と取引を行っているケースが多い。ところがスコアリングモデル融資の先進国の米国では、中小企業は1行ないしせいぜい2,3行としか取引を行っていない。従って融資を行う銀行は、財務データの信憑性を預金取引や融資取引と照合することができるので、財務データの透明性や信頼性が確保できるのである。つまり売上や利益は預金の増減に現れるので、嘘が付きにくいのである。

以上のようなことを考えると日本では、中小企業取引の内のスコアリングモデル方式(あるいはトランズアクション・バンキング方式)は、元々無理が大きかったといえるのである。

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