先週ベルギーに本社を置く世界最大のビール会社インベブが、米国最大のビール会社アンハイザー・ブッシュに対して1株65ドルで買収提案を行った。買収提案を行うまでのアンハイザー・ブッシュの株価は58.35ドルだったので、11%以上高いオファーだ。
アンハイザー・ブッシュは社名よりも、バドワイザーというブランド名で有名だ。バドワイザーをアメリカを代表するビールで私も昔アメリカにいた時は良く飲んだ銘柄だ。余談だが私はビール程その国の風土に合った味が必要な酒はないだろうと思っている。アメリカの乾いた風にはバドワイザーが良く似合う。ゴルフをした後、家に帰りシャワーを浴びて飲む一杯のバドワイザー程美味いものは少ない。
さてこのアメリカを代表し、そして世界3位と言われるビール会社に買収をかけたのはインベブという会社だ。この会社は元々は「ステラ・アルトワ」というビールを造っていたが、インターブルーと名前を変えて90年代に積極成長路線に転換した。そして南米最大のビール会社アムベブと合併して、インベブと社名を変えている。
私がインベブによるアンハイザー・ブッシュ買収提案を興味深く観察していきたいと思うのは次の点だ。まず「企業買収」の本家のようなアメリカで、アメリカを代表するビールメーカーに買収が仕掛けられた時、経営者・株主・一般国民の反応はどうなのだろうか?という点だ。
マスコミによるとアンハイザーの経営陣は、関係の深いメキシコのビール会社モデロ(コロナビールを作っている会社)を買収することで、インベブの買収に抵抗しようと模索を始めている。
次にこの買収の背景には、中国のビール市場でのシェア争いがあるはずだ。先進国のビール市場は成熟しているので、主戦場は発展途上国。なかでも人口が多い中国は主戦場だ。インベブとしては「バドワイザー」のブランドが欲しいのだろう。中国のビール市場にも注意をしたい。
ところでベルギーの伝統的なビールは麦汁を自然発酵させたビールだ。一、二度飲んだ記憶では少し酸味が強い気がした。もう一度飲んで味を確かめたいものだ。
軽くてさっぱりした味のバドワイザーを飲み慣れたアンハイザーの経営陣には、ベルギービールはかなり酸っぱいだろう。しかし第三者には興味深いディールである。