赤ワインに含まれるポリフェノールが体に良いということは以前から言われている。この説を補強するような話をニューヨークタイムズやフォーブスで読んだ。
それは薬品業界の大手グラクソ・スミス・クライン社が、マサチューセッツのベンチャー系の薬品会社Sirtrisを7億2千万ドルの現金で買収するという話だ。
Sirtris社は、「サーチュイン」という遺伝子ファミリーを活性化させることで、長寿化を図る新薬の開発を行っている会社だ。サーチュインは細胞修復、エネルギー生産、アポトーシス(細胞をプログラム死させること)に影響を与え、生体の調整機能に関与すると言われている。つまりこの機能が高まれば、例えばガンで痛んだ細胞を修復する力が高まるので、寿命が伸びるという訳だ。
赤ワインに含まれるポリフェノールの一種であるレスぺラトロールには、このサーチュインを活性化する効果があると言われている。従って赤ワインを飲むと、サーチュインが活性化して、健康になり長生きできるというのがこの説だ。
ところでネズミを使ったカロリー制限テストによると、カロリー制限をしたネズミは最大3割方長生きすることが分かっている。この時体内のサーチュインが活発になり、体内組織の修復機能が高まると考えられている。しかしネズミに課せられたカロリー制限は厳しくて、ほとんどの人は耐えられないということだ。だから人間の場合は、レスペラトラールを摂取することで「飢餓ネズミ」にならずともサーチュインを活発化させようということだ。
フランスのある実験によると、カウチ・ポテトの状態にしたネズミに大量のレスペラトロールを投与して、トレッドミル(ランニングマシーン)の中で走らせたところ、以前の倍の速さで走ることが出来たそうだ。
もっともこのレスペラトロールの量を人間がワインから摂取しようとすると一日35本の赤ワインを飲む必要があるということだ。
以上説明した話には、別の実験による否定的な意見もあるので、まだ今のところ有力な仮説という位に考えておいた方が良いかもしれない。とはいえワイン愛好家にはフォローの風だ。もっとも飲み過ぎは駄目だろうが。
「酒は百薬の長」というが、一方「酒は万病の元」ともいうそうだから。