ニューヨークタイムズを流し読みしていたら、「裕福な韓国の家庭は子供を外国に留学させる」という記事に出合った。私も帰国子女を持った身なので、関心があり最後まで読んでしまった。
話のあらましはこうだ。「2006年に韓国から海外に留学した小学生から高校生の数は29,511人になり、これは2000年の7倍である」「子供を連れた母親は父親を韓国に残し、米国、カナダ、ニュージーランドなどに移住している」「韓国で教育熱心な家庭が海外留学を望むのは、韓国の英語教育のレベルが低いだけでなく、グローバリゼーションに対応するスキル全般~例えば創造的思考法~がかけているからである」
子供の留学のため、母親と子供が海外で暮らす家庭をWild Geese familyと呼ぶそうだ。Wild Geeseとはハイイロガンという大型の渡り鳥のことだ。また時間とお金に余裕があり、頻繁に母子が住む外国にやって来る父親をEagle Father 鷲の父と呼ぶ。そして子供を海外に留学させることが出来ない父親をペンギン・ファーザーと呼ぶということだ。
子供を留学させる最終的な目的は、高い英語能力を身に付けさせ、韓国の難関名門大学に入学させることにあるという。
記事によると、学費が安いということで、米国の替わりにカナダやニュージーランドを留学先に選ぶ人が増えている。安いとはいえ学費は日本円にして百万円位はする。そして母子が暮らすとなると最低でも2、3百万円はかかるだろう。母親は労働ビザを取得することは出来ないので無収入だ。負担は父親の肩にかかる。灰色ガン・ファミリーは楽ではない。
子供を連れて海外に移住する母親には批判が多いが、彼女達は「孟母三遷」の教えに従っていると反論しているそうだ。
さて私事になるが、私の二人の娘も約5年間アメリカの小中高で過ごした。親の立場で考えると「子供の時に海外経験が出来たので、良かったのじゃないの?」ということだが、子供達にとっては英語を身につけ、新しい社会に溶け込むことは大変な努力を要したようだ。「お父さんは自分の勝手で海外に勤務したけれど、私達は選択権なく付いてきて、大変苦労したのだからね」というのが、子供達の言い分である。何事も同じだが、外から良さそうに見える程、楽なものではないのだ。
韓国の小中高生の留学の話は結局のところ、韓国の大学入学にための戦いの舞台を海外に持っていったということだ。英語力があり、グローバルなものの見方が出来る若者が育つことは韓国にとっては良いだろうが、長年父子が別れて暮らすマイナス面がどこかで出ることはないのだろうか?と気になった次第である。