今日(8月27日)日英の新聞で2つの年金の話題を見た。一つは日経新聞の「上場企業の年金積立不足額が7.3兆円と5年振りに増加に転じた」という話題。もう一つはファイナンシャルタイムズの「年金基金がレバレッジド・ローンへの投資を増やしている」という話題だ。この二つの話は無関係に見えて、実はある点で重要な関係がある。ある点というのは、株式投資のリターンが悪化しているという点だ。また株式という価格変動の大きい資産を敬遠し、価格変動性の低い(あるいはMark to marketによる評価が不要な)ローン資産を指向する動きがあるということだ。
ファイナンシャルタイムズの要点は次のとおりだ。過去6ヶ月から8ヶ月の間、幾つかの年金基金はブラックロック、イートン・バンス、INGのような運用業者あるいはプライベート・エクイティが設立したスペシャル・ヴィークルを経由してレバレッジド・ローンへの投資を拡大している。S&Pのミラー氏は今後年金基金のローン市場への参入が拡大すると予想している。有名なCalPERSもこの分野で追加ファンドを運用するマネージャーを探していると述べている。
又昨年ブラックロックがスタートさせた30億ドルのレバレッジド・ローンを購入するファンドは大部分が米国内外の年金基金により投資されている。
実はこのような動きは日本でも出ている。あまり細かい話を書くと守秘義務違反になる可能性があるので、細かい話は省くが国内のマネジメント・バイアウトと関わるファンドに幾つかの日本の年金基金が出資している。もっとも日本のレバレッジド・ローン市場は小さいので、これらが運用のメインストリートに出てくることはないだろうが。
ところで日経新聞の記事を見ると「(企業年金は運用損を企業が負担するので)企業負担の少ない401Kへの移行をある程度進めるべきだ」というみずほ総研の意見を紹介している。これは企業の論理としては正しいが、従業員の論理としては退職後のリスクを自分達で背負うことになるので中々難しい問題だと私は考えている。
先進国経済が安定成長を続けている時代は、株式運用はリターンにばらつきはあったものの、長期的に見ると他の運用資産を上回るリターンを上げてきた。だから個人の年金資金形成の上で株式投資はコア資産と言えたのだ。しかし今後10年20年というスパンで考えるとオイルの絶対的不足から経済の安定成長シナリオが万全のものではなくなっているのではないか?と私は考えている。確定拠出年金制度は何十年か後に、乏しい老後資金しかもっていない退職者層を大量に作り出すリスクなしとはしないと私は考えるがこれは杞憂というものだろうか?