金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

年金の2つの話題

2008年08月27日 | 金融

今日(8月27日)日英の新聞で2つの年金の話題を見た。一つは日経新聞の「上場企業の年金積立不足額が7.3兆円と5年振りに増加に転じた」という話題。もう一つはファイナンシャルタイムズの「年金基金がレバレッジド・ローンへの投資を増やしている」という話題だ。この二つの話は無関係に見えて、実はある点で重要な関係がある。ある点というのは、株式投資のリターンが悪化しているという点だ。また株式という価格変動の大きい資産を敬遠し、価格変動性の低い(あるいはMark to marketによる評価が不要な)ローン資産を指向する動きがあるということだ。

ファイナンシャルタイムズの要点は次のとおりだ。過去6ヶ月から8ヶ月の間、幾つかの年金基金はブラックロック、イートン・バンス、INGのような運用業者あるいはプライベート・エクイティが設立したスペシャル・ヴィークルを経由してレバレッジド・ローンへの投資を拡大している。S&Pのミラー氏は今後年金基金のローン市場への参入が拡大すると予想している。有名なCalPERSもこの分野で追加ファンドを運用するマネージャーを探していると述べている。

又昨年ブラックロックがスタートさせた30億ドルのレバレッジド・ローンを購入するファンドは大部分が米国内外の年金基金により投資されている。

実はこのような動きは日本でも出ている。あまり細かい話を書くと守秘義務違反になる可能性があるので、細かい話は省くが国内のマネジメント・バイアウトと関わるファンドに幾つかの日本の年金基金が出資している。もっとも日本のレバレッジド・ローン市場は小さいので、これらが運用のメインストリートに出てくることはないだろうが。

ところで日経新聞の記事を見ると「(企業年金は運用損を企業が負担するので)企業負担の少ない401Kへの移行をある程度進めるべきだ」というみずほ総研の意見を紹介している。これは企業の論理としては正しいが、従業員の論理としては退職後のリスクを自分達で背負うことになるので中々難しい問題だと私は考えている。

先進国経済が安定成長を続けている時代は、株式運用はリターンにばらつきはあったものの、長期的に見ると他の運用資産を上回るリターンを上げてきた。だから個人の年金資金形成の上で株式投資はコア資産と言えたのだ。しかし今後10年20年というスパンで考えるとオイルの絶対的不足から経済の安定成長シナリオが万全のものではなくなっているのではないか?と私は考えている。確定拠出年金制度は何十年か後に、乏しい老後資金しかもっていない退職者層を大量に作り出すリスクなしとはしないと私は考えるがこれは杞憂というものだろうか?

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Cash in (イディオム・シリーズ)

2008年08月26日 | 英語

Cash in (on ~)とは「~によってもうける」という意味だ。ニューヨーク・タイムズに次の文章が出ていた。Honda is cashing in on its reputation for the reliability and fuel effciency.「ホンダは信頼性と燃費の良さに対する評判によって儲けている」という意味だ。ホンダはトヨタがビッグ3の後を追い、ピックアップトラックの生産を始めても、「環境に優しい」車を作るという自分達の哲学を守ってまねをしなかった。今そのことがプラスに作用している。

ガソリン高から米国では車の売れ行きが落ちている。今年に入って車全体の売上は11%減少している。特に売上が落ちているのは、SUVやピックアップトラックなど燃費の悪い車に頼っていたGMやフォードだ。GMの売上は18%、フォードの売上は14%下落している。トヨタも7%の減だ。その中でホンダは3%売上を伸ばしている。

中でも良く売れているのはフィットだ。フィットの販売台数は79%も増えている。ニューヨーク・タイムズは「ホンダの車はトヨタの車より個性的で、運転して楽しい」というあるアナリストの声を紹介していた。

良いものを素直に受け入れる。これは米国社会の良いところで、改革の原動力だ。ホンダを受け入れる中に私はアメリカの柔軟性と復活の兆しを感じている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アマゾン栄えて、本屋は苦戦

2008年08月26日 | うんちく・小ネタ

昨日自宅のメールを開くとアマゾンから「出品中の『ラスト・オイルショック』が売れたので直ぐ送品されたし」というメールが来ていた。先週末に出品したばかりなのに随分早く売れたものだ。この本の定価は1,500円、売値は1,100円(郵送料を差し引くと手取りは600円程度なのだが)とまあまあのディール。それよりも本を希望する人にお安く分けてあげることができたら幸いと考えている。紙も限られた資源なのでリサイクルに貢献したいと考えている。

「ラスト・オイルショック」は新書をアマゾンで買い、読んだ後アマゾンのバーチャル古本市で販売しているのだから、アマゾンにはダブルで貢献した訳だ。このようにアマゾンは結構良い商売をしているが、その影で既存の本屋さんは苦労している。7月には日本洋書販売という洋書卸の最大手が自己破産した。この会社はTIMEなど有名雑誌の輸入を手がけていたが、売れ行き不振で破産に至った。また新しいところでは、昨日大分の新聞に載ったが、同地の大手書店が会社更生法を申請した。

従来型の本屋が苦戦する理由はアマゾンなどのネット販売との競争だけではない。まず一般に消費者が新刊本を買わなくなった(私など職業柄多く買っている方だろう)。「読み切っておしまい」という本はまず図書館で探す。図書館にない場合はブックオフで探す。私の場合この手の本を求めて町の本屋さんを訪ねることはまずない。次に専門書に近いものは丸善で探すこともあるが、買う本が決まっている場合はまずアマゾンで買う。

町の本屋さんが苦戦する理由の一つに万引きを上げる人も多い。新書を万引きしてブックオフに売る人が多くて経営に大きな影響を与えているという話を聞く。

パソコンや携帯電話で本を読む電子書籍というサービスも始まっている。私は利用したことがないし、又当面パソコンで本を読む積もりもないので、その影響度合いに余り関心はないが、町の本屋さんにとってネガティブな材料であることは間違いない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本10年、アメリカ5年

2008年08月26日 | 社会・経済

桃栗三年、柿八年という諺になぞらえると日本10年、アメリカ5年といえるかもしれない。何が10年や5年かというと不動産バブルの崩壊から立ち直る年数である。不動産と株のバブル崩壊後日本は「失われた10年」という低成長期を経験した。一部の人はアメリカのバブル崩壊の日本のそれとの近似性からアメリカの立ち直りに長い時間がかかると予想する。しかし大部分の人はアメリカは日本と同じ道を辿らないと考えている。

エコノミスト誌は最近日米のバブルを比較している。それによるとバブルの傷自体はやや意外だが、アメリカの方が大きいところがある。例えば平均的な住宅価格は日本で1985年から91年にかけて51%上昇しているが、アメリカでは2000年から2006年に90%上昇している。日本の住宅価格はその後40%下落している。米国の住宅価格は既に20%下落しているが、更に10%以上下落すると見ている人が多い。

商業用不動産については同じ期間に日本では8割上昇し、米国では9割上昇している。従って米国の方が不動産バブルの度合いは大きいとエコノミスト誌は言う。

日本では同時期に株式バブルも崩壊したが、個人で株を所有している人が人口の3割なので、株式所有が半分を超える米国より家計に与える影響は少ないというのが同誌の主張だ。また貯蓄率の違いも米国に不利だ。日本では90年代初めに15%だった貯蓄率は2001年には5%に低下している。この分消費が増えたが米国にはこのような糊代はないとエコノミスト誌は主張する。

以上のように米国のバブルの傷跡の方が日本のそれよりも大きい面があるが、多くの人が米国は日本のように長い景気低迷を経験しないだろうと判断する根拠は金融市場と政治構造が、含み損を実現させ早期のバラスシートの改善を促すからだ。これに較べて日本では小出しで金融システムへの公的資金投入が行われたため、バブル処理が遅れた。(他にも97年に消費税を上げた等政策の誤りはあるが)

又バブル崩壊後日本は円高が続いたが、米国の場合はドル安となり輸出が伸びていることもプラス材料だ。

しかしエコノミスト誌が指摘していない大きな弱みが今の米国にある。それはオイル価格の上昇による自動車産業の低迷だ。またガソリン価格の上昇は米国の住宅市場を構造的に変える可能性があると私は見ている。つまり諸費者の都心回帰志向が高まり、郊外の大きな一戸建て住宅の価格は未来永劫回復しない可能性があると私は見ている。バブル崩壊とオイルショックの二重奏。これは日本が経験しなかったものだ。

米国の試練が日本のバブル崩壊より格段に軽いという訳ではないだろう。個人の直感的な判断だが、米国の立ち直りに要する時間を5年とみた。長過ぎるかもしれないが、その位の積もりでモノゴトを見ておいた方が失望が少なくて済むと私は考えている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ファニー残って地銀は大損

2008年08月25日 | 社会・経済

今米国金融界で一番の関心事は、政府がいつどのような形でファニーメイとフレディマックを救済するか?ということだろう。先月財務相は両者の救済についてクレジットラインを提供し、債券と株式に投資する権限を得たが詳しいスキームは未定だ。もっとも多くのアナリスト達は政府が現在の優先株より優先順位の高い優先株を引き受ける形で資金を注入すると見ている。

こうなると問題は現存する優先株と普通株式の価値だ。

フィナンシャル・タイムズによると、現在の優先株式360億ドルは米国の地銀や保険会社が大部分を保有している。ムーディズは優先株式の格付を金曜日にA格からBaa3に格下した。また優先株式の市場価値は6月30日以来半分に低下しているが、償却を実施している金融機関はほとんどない。

ファニーメイとフレディマック救済のために、政府がシニアな優先株式を引き受けると現在の優先株式の配当は減額されるとアナリスト達は見ている。米国の地銀には苦しい日が続きそうだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする