ニューヨークタイムズ(NT)によると、中国に生産拠点を置くアメリカのメーカーが工場をベトナム等中国以外のアジア諸国に建設する動きを強めている。このベトナムシフトは日本メーカーではかなり前から起きていることで目新しい話ではないが、輸入物価の上昇に悩むアメリカの姿が見えて興味深い。
日本企業の例では、キャノンは中国での工場拡大を止めて、ベトナムのハノイ郊外のプリンター工場の労働者を倍増させ8千人規模に拡大している。
アメリカの下着・衣料メーカーのハインズブランド社は、ハノイ郊外に2つの工場を作っている。同社は高騰する中国人の人件費対策として南京工場の自動化を進めている。これに加えてタイにも2つの工場を建設中だ。ハインズの製品は日本でも売られているので、今度生産地を確認してみようと思う。
中国が世界の工場としての魅力を失いつつある理由は幾つかある。一番は人件費の上昇だ。沿岸地方では非熟練工で1週間40時間働いて120ドル稼ぐ。ベトナムでは48時間(つまり土曜日も働いて)1週間の給料は50ドルだ。
また人民元の米ドルに対する上昇も加味したドルベースで見ると、中国の人件費はこの1年間で25%以上上昇している。
中国は外国企業に対する税制優遇を段階的に廃止している。一方ベトナムは外国企業に対する税制優遇を続けている。具体的には最初の4年間は法人税はゼロ、そして次の4年間は通常税率(10%)の半分にするというものだ。
中国に対する外国からの直接投資は過去3年間で3割方増加している。しかし同期間でフィリピンに対する外国からの直接投資は2倍に、インドでは4倍に、ベトナムでは8倍に拡大している。
中国以外に工場を作る動きはChaina plus oneというそうだ。
中国以外に工場を持つということは、労働コスト面だけでなく、エネルギー不足、通貨高、政策変更リスク、更には社会的混乱など様々なリスクを緩和することにもなる。
我々の個人投資の世界でも、Chaina plus oneやJapan plus oneあるいはDollar plus oneなどPlus one戦略を考える時代だろう。