金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国からベトナムへシフト

2008年06月18日 | 社会・経済

ニューヨークタイムズ(NT)によると、中国に生産拠点を置くアメリカのメーカーが工場をベトナム等中国以外のアジア諸国に建設する動きを強めている。このベトナムシフトは日本メーカーではかなり前から起きていることで目新しい話ではないが、輸入物価の上昇に悩むアメリカの姿が見えて興味深い。

日本企業の例では、キャノンは中国での工場拡大を止めて、ベトナムのハノイ郊外のプリンター工場の労働者を倍増させ8千人規模に拡大している。

アメリカの下着・衣料メーカーのハインズブランド社は、ハノイ郊外に2つの工場を作っている。同社は高騰する中国人の人件費対策として南京工場の自動化を進めている。これに加えてタイにも2つの工場を建設中だ。ハインズの製品は日本でも売られているので、今度生産地を確認してみようと思う。

中国が世界の工場としての魅力を失いつつある理由は幾つかある。一番は人件費の上昇だ。沿岸地方では非熟練工で1週間40時間働いて120ドル稼ぐ。ベトナムでは48時間(つまり土曜日も働いて)1週間の給料は50ドルだ。

また人民元の米ドルに対する上昇も加味したドルベースで見ると、中国の人件費はこの1年間で25%以上上昇している。

中国は外国企業に対する税制優遇を段階的に廃止している。一方ベトナムは外国企業に対する税制優遇を続けている。具体的には最初の4年間は法人税はゼロ、そして次の4年間は通常税率(10%)の半分にするというものだ。

中国に対する外国からの直接投資は過去3年間で3割方増加している。しかし同期間でフィリピンに対する外国からの直接投資は2倍に、インドでは4倍に、ベトナムでは8倍に拡大している。

中国以外に工場を作る動きはChaina plus oneというそうだ。

中国以外に工場を持つということは、労働コスト面だけでなく、エネルギー不足、通貨高、政策変更リスク、更には社会的混乱など様々なリスクを緩和することにもなる。

我々の個人投資の世界でも、Chaina plus oneやJapan plus oneあるいはDollar plus oneなどPlus one戦略を考える時代だろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Take to the streets(イディオム・シリーズ)

2008年06月18日 | 英語

Take to the streetsという言葉は、韓国で起きている反政府の大きな抗議デモについてファイナンシャルタイムズで使われていた。

Korean Nationalists took to the streets in their tens of thousands.「韓国の愛国者達は数万人規模で抗議デモを行った。」Takeは色々な前置詞と結合して、色々な意味で使われる。Take outというと「コーヒーや食事を持って帰ること」だし、Take offというと「離陸する」という意味の他「景気が良くなる」という意味もある。Take toには「(暴力などに)訴える」と意味があるので、Take to the streetsで「抗議デモをする」という意味になるのだろうと私は考えている。

李大統領は数ヶ月前に選挙で勝ったばかりだが、米国からの牛肉輸入再開問題で20年振りの大規模な反政府デモに見舞われている。これは牛肉自体の問題より、李大統領が米国の操り人形Stoogeに見えたことに対する反発だ。韓国経済の活性化には、市場開放や外資導入が必要だが、それに対する潜在的な反発が牛肉デモとなって火を吹いたいうべきだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

65歳以上の雇用が増える

2008年06月17日 | 社会・経済

男性では65歳以上の、女性では60歳以上の雇用が増えている。ただし英国の話だが。ファイナンシャルタイムズ(FT)によると、英国では2008年3月までに、退職年齢以降の雇用が1年前に較べて、8.8%増加している。この年齢階層における雇用増加が他の年齢階層に較べて一番多い。因みに次に雇用増加が多かった年齢階層は男性で50歳から64歳の階層、女性で50歳から59歳の階層だ。

現在の英国の退職年齢は男性65歳女性60歳だが、女性の定年年齢も段階的に引き上げられ、2020年には60歳になる予定だ。

ついでに他の欧州諸国の退職年齢を見ると、ドイツには定年年齢はない。年齢を理由とする解雇は違法であり、年金受給を理由とする解雇も又「退職手当法」で違法だ。フランスの定年年齢は60歳である。

さて記事に戻ると、高齢者の雇用が拡大している理由として「出生率の低下」と「長寿化」をあげている。またある人々にとって仕事は嫌なものではなく、社会的なネットワークを確立し、社会参加をする場であるという。

またリーマンブラザースの上級政治経済顧問は、英国経済が重工業中心からサービス業依存型に移行してきたことが大きいと指摘する。つまり肉体労働が減ったので、高齢者でも働き易いということだ。また年金経済の専門家の中には、多くの人々はもっと柔軟な退職を望んでいると指摘している。

日本の状況を厚生労働省が17年6月に発表している「高年齢者就業実態調査」で見てみると、男性の場合60~64歳で68.8%が就業している。また16.1%が非就業ながら就業を希望している。65歳~69歳については49.5%が就業し、21%が就業を希望する非就業者である。

日本も又高齢者の就業希望が非常に高いと言える。そしてその動機も経済的なものだけではなく、社会的なネットワークの維持や確立にもあると考えられる。

思うに現在生きている労働法は、肉体労働に重きをおいた「第二次産業」中心の社会の産物であり、当時は平均寿命も今よりはるかに短かった。法律は部分的には手直しされているものの、社会の急激な変化に付いて行けていないということだ。

労働基本法を「第三次産業」中心社会、情報化社会、能力主義社会、高齢化社会に対応するべく、早急に手直しすることが今の日本で必要なことなのだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

暫く円安が定着か?

2008年06月17日 | 金融

昨日(16日)ドル円レートは108.58円まで円安が進んだ。これは4ヶ月振りの円安水準だ。今年の第1四半期は金融危機が進行する中で米国の連銀が金利を下げたため、日米金利差が接近し、円高が進行した。株式相場が下落したため、キャリートレードのポジションが縮小し円買いが進み、円高は14年振りに95.78円/ドルまで進んだ。

しかし3月中旬のベアー・スターンズ救済から状況は変わり、株式市場の安定とともに、投資家のリスクテイク意欲が回復して、利回りの高い資産選考が強くなった。

日本以外の主要国ではインフレ退治が中央銀行の喫緊の課題のため、政策金利の引き上げが視野に入ってきているが、日本ではインフレの姿がチラチラしだした程度で、日銀の関心事は景気にあるので、当面の金利引き上げはなさそうだ。このため円・ドル、円・ユーロの金利差は拡大する可能性が高く円安が暫く定着する。

海外の金融面ではゴールドマン・ザックスが、ヘッジ・ファンド・チェイン・キャピタルが運営するSIV(Special Invetment Vehicle)のリストラクチャリングの最終段階に差し掛かっている。もしこのリストラの結果、SIVが保有する資産を透明性の高い方法で売却することができると、ストラクチャード・ファイナンス問題は新しいステージに入ることになる。

この一連の流れも投資家のリスクテイク意欲を増加させるはずで、円安要因と考えておいて良いだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

興味深いビール頂上戦争

2008年06月16日 | 社会・経済

先週ベルギーに本社を置く世界最大のビール会社インベブが、米国最大のビール会社アンハイザー・ブッシュに対して1株65ドルで買収提案を行った。買収提案を行うまでのアンハイザー・ブッシュの株価は58.35ドルだったので、11%以上高いオファーだ。

アンハイザー・ブッシュは社名よりも、バドワイザーというブランド名で有名だ。バドワイザーをアメリカを代表するビールで私も昔アメリカにいた時は良く飲んだ銘柄だ。余談だが私はビール程その国の風土に合った味が必要な酒はないだろうと思っている。アメリカの乾いた風にはバドワイザーが良く似合う。ゴルフをした後、家に帰りシャワーを浴びて飲む一杯のバドワイザー程美味いものは少ない。

さてこのアメリカを代表し、そして世界3位と言われるビール会社に買収をかけたのはインベブという会社だ。この会社は元々は「ステラ・アルトワ」というビールを造っていたが、インターブルーと名前を変えて90年代に積極成長路線に転換した。そして南米最大のビール会社アムベブと合併して、インベブと社名を変えている。

私がインベブによるアンハイザー・ブッシュ買収提案を興味深く観察していきたいと思うのは次の点だ。まず「企業買収」の本家のようなアメリカで、アメリカを代表するビールメーカーに買収が仕掛けられた時、経営者・株主・一般国民の反応はどうなのだろうか?という点だ。

マスコミによるとアンハイザーの経営陣は、関係の深いメキシコのビール会社モデロ(コロナビールを作っている会社)を買収することで、インベブの買収に抵抗しようと模索を始めている。

次にこの買収の背景には、中国のビール市場でのシェア争いがあるはずだ。先進国のビール市場は成熟しているので、主戦場は発展途上国。なかでも人口が多い中国は主戦場だ。インベブとしては「バドワイザー」のブランドが欲しいのだろう。中国のビール市場にも注意をしたい。

ところでベルギーの伝統的なビールは麦汁を自然発酵させたビールだ。一、二度飲んだ記憶では少し酸味が強い気がした。もう一度飲んで味を確かめたいものだ。

軽くてさっぱりした味のバドワイザーを飲み慣れたアンハイザーの経営陣には、ベルギービールはかなり酸っぱいだろう。しかし第三者には興味深いディールである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする